静かな夜、古びた村の外れに位置する廃墟があった。
その廃墟はかつては活気に満ちていたが、今では風に吹かれた雑草と苔に覆われ、ひっそりとした面影を残すだけだった。
この場所には、常に奇妙な気を感じる者がいた。
それは村人たちの間では、立ち入ることを禁じられた「禁忌の地」とされていた。
ある晩、大学生の一樹は友人の真由美と一緒に肝試しをしようと計画した。
彼らは恐怖心よりも冒険心が勝り、村の語り草である廃墟に足を運ぶことに決めた。
「大丈夫、ただの噂だし、行くだけ行ってみようよ」と、一樹が言うと、真由美も賛同した。
彼らは薄暗い道を進み、廃墟の前に辿り着いた。
月明かりの下で、古い建物は eerie(不気味)な輪郭を描いていた。
心のどこかで冷や汗をかきながらも、一樹はドアを押し開けた。
中は人の気配がないだけでなく、時間が止まったかのような静寂に包まれていた。
廃墟の奥には、信じられないほど古いお守りや呪物が散らばっている部屋があった。
その中央には、大きな神棚が置かれており、そこに祀られているはずの神々が感じられる気が漂っていた。
しかし、その気はどことなく邪悪さを孕んでいるように感じられた。
一樹はその不気味さに背筋が凍る思いをしながらも、真由美に微笑んで見せた。
「大丈夫、何も起きないよ。」
その時、真由美が目を輝かせて言った。
「すごい、これ見て!ここに何か書かれているよ。」彼女が指さした先には、古い木の板に刻まれた文字があった。
「復讐の呪文」とだけ書かれていた。
興味本位で二人はその呪文を声に出して読んでみた。
すると、突然、廃墟全体が震え始めた。
まるで何かが目を覚ましたかのような音が響き渡り、物が崩れ落ちる音に混ざって、低い呪文のような声が聞こえた。
「お前たち、私の復讐を遂げる者よ。」それはどこからともなく響いてきた。
二人は恐怖に目を見開いた。
真由美は心臓がバクバクし、「行こう、一樹!こんなところもう出よう!」と叫んだ。
しかし、一樹は足がすくんで動けなかった。
「大丈夫だ、まだ何も起きていない!」と自分に言い聞かせたが、空気の中に寒さが浸透してきた。
何かが、何かが迫ってきている。
瞬間、部屋の奥から不気味な影が現れた。
それは人の形をした幽霊で、その表情は憎しみに満ちていた。
「私を封じ込めた者たち、正義の名のもとに私の復讐を果たせ。」影は言った。
その言葉に、真由美は恐怖で泣き出し、「逃げよう、一樹、お願い!」
一樹も恐れに駆られ、二人は廃墟を飛び出そうとしたが、ドアは開かない。
まるで何かに阻まれているかのようだった。
影は近づき、二人の周囲に冷たい気をもたらした。
「私の呪いを受け入れよ。」
その瞬間、一樹の中に、過去に自分が知らずに受けた背徳的な行いが蘇った。
それは、村から追放された者たちの怨念を自らの無知で無視していたことを指摘されたようなものだった。
恐怖心が身体を包み込み、真由美は泣き叫びながら一樹の手を強く握り締めた。
最終的に、影は彼らを呪いの輪へと仲間に引き込もうとした。
その時、二人はようやく意識を取り戻し、力を振り絞ってドアを叩いた。
「お願い、助けて!」と叫び続けた。
しかし、声はただの風にかき消され、影は笑いながら彼らを取り込んだ。
その後、村では二人の行方が分からなくなった。
村人たちは、また一つの伝説が生まれたことを知る。
「Beware the curse of the forsaken ones(忘れられた者たちの呪いに気をつけよ)」と。
彼らの姿は、廃墟の中で永遠に彷徨うこととなり、魂は復讐の念に囚われ続けることとなった。