消えた遊園地の影

ある遊園地がその存在すらも忘れ去られて久しい時、人々の記憶の片隅に「消えた遊園地」として語り継がれていた。
その場所は、かつて子どもたちの笑い声で賑わい、色とりどりのライトが輝いていたが、ある日突然閉園した。
その理由は、それを知る者すら少なくなったが、噂では「悪」と何かしらの関わりがあったと言われていた。

ある晩、友人たちと一緒に肝試しでもしようと考えた佐藤は、悪名高いその遊園地を訪れることを提案した。
友人たちは怯えたが、好奇心に勝てずに佐藤に付き合うことになった。
彼らは夜の闇に包まれた遊園地のゲートをくぐり、心臓の高鳴りを感じながら中に足を踏み入れた。
すぐに、彼らは異様な静けさに包まれていることに気付いた。
かつての楽しげな音は消え去り、ただ静寂が広がっていた。

「ねえ、やっぱり戻ったほうがいいんじゃない?」内藤が言ったが、佐藤は興奮冷めやらぬ様子で「まだ中を見て回ろうよ!」と誘った。
彼は霊や恐ろしい話が好きで、こうした体験を楽しみにしていた。

彼らは次第に広がる遊具やアトラクションを巡り始めるが、遊園地の奥へ進むにつれて、不可解な現象が起こり始めた。
視界の端に、ふと、何かが動くのを感じる。
だが、目を凝らしても何も見えず、ただ気配だけが漂っていた。
山田は怖くなってきて「帰ろうよ、もう本当にやめよう」と言ったが、佐藤は「それがダメなんだよ。面白いぞ、ほらあれを見て!」と、クレーンゲームが急に音を立て始めたことに驚き、他の友人たちも心得ていた様子でその場に留まった。

「この遊園地には悪が潜んでいる」とその時、内藤が何気なく言った言葉が、運命を狂わせることになった。
すると、急に周囲の空気が変わり、遊園地の景色が揺らぎ始めた。
四方から人影が現れ、彼らを取り囲むように動き出した。
最初は遊戯の一環かと思われたが、次第にそれは現実のものだと認識することになった。
彼らは無我夢中で逃げようとするが、その影たちは彼らの動きを完全に封じ込めてしまった。

「逃げろ!」佐藤は叫び、内藤や山田たちに手を差し伸べた。
しかし、影たちは彼らの体を徐々に覆い込んでいく。
力を振り絞って逃げるつもりだったが、身体が徐々に動かなくなるのがわかった。
まるで、次第に彼らの「存在」が薄れていくように思えた。

その時、遊園地の中から聞こえる、不気味な声が彼らの耳に届いた。
「お前たちは私たちを笑わせたり、楽しませたりするために来たのではない。この『消えた遊園地』の意味を知る者はいない。そして、お前たちはその存在すらも消すことになる。」

その言葉に恐怖を抱いた佐藤たちは、自分たちがここにいることの意味を理解した。
心の底から恐ろしい思いに駆られたとき、影たちはさらに強固に彼らを包み込み、何もかもが黒い霧に飲み込まれていった。

次の日、遊園地の前を通った者たちは、遊園地の入り口が静まり返っていることに気づいた。
しかし、その夜、遊園地の遊器具が誰もいないのに動いていることを目撃した者たちが続出した。

一方、佐藤たちの行方を知る者はいなかったただ遊園地の中だけに彼らの魂が閉じ込められたままとなり、遊園地の影となって消えてしまうのだった。
そして、彼らの姿は消えた遊園地の中にのみ、もやのように存在し続けることになった。

タイトルとURLをコピーしました