間(あい)の町は、長い歴史を持つ不思議な場所だった。
町の入り口には、神社がそびえ立ち、誰もがその荘厳な雰囲気に圧倒される。
地元の人々は、この神社には何か特別な力が宿っていると信じていた。
しかし、その力がどのようなものか知る者はいなかった。
町に住む青年、清志は高校生であり、友人たちとともに時折肝試しをすることが楽しみだった。
ある晩、彼らは神社の裏手にある「影の間」と呼ばれる、神社に隣接する古い土蔵に向かった。
その場所は、怪談の元になった場所だと噂されており、訪れる者が不幸な目に遭うことがあると言われていた。
「こんなところに行くの、ちょっと怖くない?」と友人の優子が言った。
しかし、清志は「大丈夫だよ。ここで何かが起こったら、逆に面白いじゃん」と自信満々に言った。
友人たちは少し不安になりつつも、彼についていくことに決めた。
影の間に足を踏み入れると、薄暗い部屋の中には埃にまみれた道具や古い祭りの残骸が散らばっていた。
清志たちは懐中電灯の明かりを頼りに、周囲を探索した。
吹き抜ける風が、まるで何者かのささやきのように耳元でささやく。
その時、清志は、一つの影に気がついた。
最初はただの影のように見えたが、次第にその影が人の形を持ち、彼の目の前で動いているのを感じた。
友人たちが気づく前に、清志はその影に吸い寄せられるように近づいた。
「見て、あの影!何かいる!」と叫ぼうとした瞬間、その影が大きくうねり、彼の視界を遮った。
影の中から、かつての清志の親友、暁(あきら)が現れた。
「清志…助けてくれ…」その声は、誰も聞いたことのない悲しみを帯びていた。
暁は数年前、不慮の事故で亡くなっていた。
しかし、清志はこの瞬間、彼が戻ってきたのかと感じた。
「お前は…本当に暁なのか?何でこんなところに…」清志が呆然とした言葉を吐くと、暁は無言で頷いた。
彼の周囲には黒い霧が漂い、清志はその霧に飲み込まれるように感じた。
しかし、彼は恐怖を超えて、暁のもとに歩み寄った。
「もう一度、やり直したいんだ…お前も、早くこっちに来い」と暁は叫んだ。
清志は、自分が彼の求める者になれるのか、自問自答した。
その瞬間、影が彼を包み込み、彼の意識が薄れていく。
「復讐だ…復讐を果たすために来た」と彼の耳元でささやく声が聞こえた。
気がつくと、清志は神社の本殿の前に立っていた。
影の間から戻されたのか、すべての記憶があいまいになっている。
恐れと混乱の中、彼は何が起こったのかを理解しようとしていた。
暁の言葉が彼の心に残っていた。
復讐とは何なのか、誰から何を果たすべきなのか。
清志は神社の門をくぐり、一歩を踏み出す。
影は彼の後ろにいるかのように感じ、彼はいくつもの影が周囲を取り囲むのを知っていた。
彼は何かに取り憑かれたように、再び影の間へと足を運ぶ。
彼にはこの運命を受け入れる選択肢しか残されていなかった。
その後、町には奇妙なことが起こり始めた。
失踪した者が現れない日々が続き、影の間の力が再び目覚めたかのように感じた。
清志もまた、失った友を求め、自分自身を取り戻すための苦しい旅を続けていた。
そして、彼の中にも影が宿り始めていた。
清志は、復讐の道を進むことになってしまったのだ。
再び喪失した者たちを呼び寄せ、影の中で彼らを望むことに。
そして、影の中で彼はきっと、暁に再会する日を夢見続けていた。