静かな町の片隅に、一軒の古びた家があった。
その家は誰も住んでいないが、周囲の住人たちは決して近づかない。
なぜなら、その家には「影の呪い」が存在すると噂されていたからだ。
特に、家の窓から見える古びた影掛けの影が、人々を不安にさせていると言われていた。
ある日の夜、田中光一という若者が友人たちと肝試しをしようと、この家にやってきた。
好奇心旺盛な光一は、呪いの噂を聞いて興味が湧いたのだ。
友人たちは、彼の提案に戸惑いながらも結局同意した。
家の周りは今にも崩れそうな木々に囲まれ、月明かりが漏れる中で、彼らは家の入り口に立った。
中に入ると、古い畳の匂いと湿気が漂っていた。
空気がひんやりとしていたが、友人たちは盛り上がっていた。
笑い声が響く中、光一は物語に興味を持ち、「この家の影は、本物の呪いにかかっているらしい。何か見えるかもしれないよ」と友人に話しかけた。
しかし、友人たちは怯えながらも、彼の言葉を冗談だと思うことにしていた。
家の奥へ進むと、薄暗い部屋にたどり着いた。
そこには、古びた影掛けがあった。
ほとんど壊れているように見えたが、何か不気味な存在感を放っていた。
光一は興味津々で影掛けの前に立ち、「これが呪いの影か…」と呟いた。
すると、不意に影掛けが大きく揺れ、まるで何かがそこに宿っているかのように感じられた。
「ちょっと、やめてよ!」と友人の佐藤が引きぎわい、光一の真後ろに立った。
すると静かな空気が一変した。
影掛けの後ろから、黒いものがゆっくりと現れた。
その影はまるで手のように伸び、彼らに向かって触れようとしていた。
煌々と光る影は、次第に生き物のように見え始めた。
光一は冷や汗をかきながら、「これ、やばいかもしれない」と言えずにはいられなかった。
一瞬、友人たちの顔が真っ青になった。
そのまま影は、友人の一人に向かって伸びると、彼に触れた。
光一は思わず叫んだ。
「逃げろ、早く!」
しかし、友人たちは動けなかった。
影に触れた友人は、急に表情が変わり、まるで操り人形のように動き出した。
「私の影を奪おうとしたね…許さない…」と言った彼の声は、まるで呪いの念がこもっているかのようだった。
友人たちは恐れおののき、後ずさりした。
彼らの周囲に、影が渦巻き始めた。
光一は必死で家の外に向かった。
これ以上は耐えられない。
振り返ると、友人たちは影に吸い込まれているようだった。
その声は、ますます遠くなっていく。
「光一、助けて…!」という叫び声が響く中、彼はそこから逃げ出した。
庭に出た瞬間、家の影はそのまま消え、再び静寂が訪れた。
光一は息を整え、振り返った。
友人たちの姿は、もうどこにも見当たらなかった。
古びた家は、再び普段通りに閉ざされた。
影掛けがあった場所には、ただ静まり返る空気だけが残っていた。
光一は、友人たちを探し続けたが、結局見つけることはできなかった。
彼は長い時間をかけて心の底からの恐怖を抱え、その夜の出来事を口にすることができなかった。
町の人々は、光一のことを「影の呪いにかかった者」と噂し始めた。
彼は家に近づくことすらできず、孤独な日々を送り続けるのだった。
影の呪いは彼の記憶に深く刻まれ、永遠に彼を追いかけるかのように…