静まり返った神社の境内、秋の風が冷たく吹き抜ける。
神々が宿ると言われるこの場所には、長い間忘れられた不気味な伝説があった。
その中に登場するのは、陰(かげ)という名の女性だった。
彼女はその神社の近くに住む、目立たぬ平凡な存在であった。
日々の暮らしの中で、彼女は周りの人々に愛されず、いつの間にか孤独を抱え込むようになった。
そんなある日、陰は友人から古い呪いの話を耳にした。
曰く、神社の奥にある祠には「影の呪い」が封印されており、その呪いを解くことで望むものを手に入れることができるという。
ただし、呪いを解く者には代償が伴うとも言われ、影がその者を追い続けるという恐ろしい結果を招くのだ。
好奇心に駆られた陰は、その噂に半信半疑であったが、自身の運命を変えたい一心で、神社の奥へ向かった。
薄暗い境内を進むにつれ、不気味な気配が彼女を包み込んだ。
どこかに影が潜んでいるような恐怖感に襲われるが、目的があった。
彼女は静かに祠の扉を開け、最奥にいた。
内部には古びた祭壇があり、その上には、呪文が刻まれた石板が置かれていた。
陰はその石板を見つめ、「この呪を解くことができれば、私の人生が変わる」と願った。
心の中で呪文を繰り返し、次第に儀式が始まる。
すると、背後にあった影が動き始めた。
まるで彼女の呼びかけに応じているかのように。
その瞬間、影が彼女のもとに駆け寄ってきた。
恐れを感じながらも陰はその影を受け入れ、更なる呪文を唱え続けた。
しかし、同時に何かが彼女の心に触れてきた。
まるで影が彼女の心の中に入り込んで、彼女の過去や孤独を見透かしているかのようだった。
影はただの存在ではなく、彼女自身の一部であるような気がした。
呪文を唱え続けるうちに、彼女の思考は次第に混乱していった。
「この呪文には、私の過去を算出する力がある。全てを忘れさせてくれるのかもしれない」と、陰はそう考えた。
しかし、その代償が何であるかはわからなかった。
居心地の悪い感覚が増していく中、陰はついに呪文を唱え終えた。
その瞬間、光と共に影が彼女を包み込み、彼女の心に潜む過去の出来事がフラッシュバックした。
彼女の心には、幼少期の辛い記憶や、周囲から受けた冷たい視線、友情の裏切りなどが鮮明に蘇ってきた。
影はその記憶を彼女に返し、影の正体が彼女自身の心の傷であることを示した。
陰は呪文を未だかつて感じたことのない混乱と恐怖に取り囲まれる。
彼女はその時、自身の願いが決して実現することはないと悟った。
影はずっと彼女の中にいて、彼女から逃れることはできないのだ。
最終的に、陰は呪文を解くことができなかった。
神社の祠の中で、彼女は影によって捕らえられ、永遠の孤独を選ばざるをえなかった。
彼女の影はいつまでも神社に残り、訪れる者たちにその存在を知らせる。
伝説は再び生き返り、影の呪いは新たな者を待っているのだった。