封印された闇の影

彼女の名前は美奈子。
彼女は都心の喧騒を離れ、静かな村で過ごすことにした。
その村は、背の高い木々に囲まれ、夜になると月明かりがほのかに輝く、まるで絵画のような光景が広がっていた。
しかし、村には一つの恐ろしい伝説があった。
古びた神社の裏に広がる森には、決して近づいてはいけない場所があるという。
そこには、封印された“闇”が存在していると村人たちが語り継いでいた。

美奈子は噂を聞くと興味を抱く。
封印された闇とは一体何なのか。
その好奇心が彼女を森へと導くのだった。
村の人々は決して立ち入ろうとしない場所だったが、美奈子はその神秘に触れてみたかった。
夕暮れ時、彼女は一人で神社へと向かった。

神社に着くと、静けさが支配していた。
木々の間から漏れる月光が、彼女の足元を照らしている。
その光を頼りに、美奈子は神社の裏手に進んでいった。
ふと、背後で足音が聞こえたような気がした。
振り返るが、誰もいない。
彼女は気のせいだと思い、さらに森の奥へと足を踏み入れる。

しばらく進むと、突如として温度が下がった。
その瞬間、美奈子は背後に視線を感じた。
振り返ると、そこには何かが存在していた。
暗闇から這い出てくるように、不気味な影が彼女をじっと見つめていた。
恐怖が心を締め付けるが、美奈子はその場から逃げ出すことができなかった。
なぜか、そのまま立ち尽くすことしかできなかった。

影は一歩近づくと、静かに口を開いた。
「あなたも、私と同じか…」その声は深く、低い響きがあった。
美奈子は恐怖で震えながらも、喉の奥から「あなたは誰?」と絞り出すように問いかけた。

「封印された者、私の名は梶浦。何世代も前に、この地に封印されたのだ」と影は告げる。
その言葉に美奈子は呆然とし、次に何が起こるのか予感するようになった。
闇に封じ込められた存在。
彼女は自分が何に立ち向かっているのかを理解し始める。

「私を解放してほしい」と梶浦の声は訴えかける。
しかし、美奈子はその恐ろしい選択肢に良心が痛んだ。
彼女は何とか逃げようとしたが、足が動かない。
梶浦の存在に引き寄せられ、反抗できる気力を失っていた。

「さぁ、あなたも私の仲間になりなさい。二度とこの世界から逃れられないように…」その言葉と共に、闇が彼女を包み込んだ。
美奈子は身動きができず、恐怖で全身が硬直した。

「ダメだ、逃げろ!」心の中で叫ぶ声が聞こえる。
しかし、それは次第に遠のいていく。
美奈子の背後に立つ影は、彼女の心の奥深くに入り込んでいく。
彼女は決して追い越すことのできない闇の中に飲み込まれていった。

気がつくと、美奈子は気を失っていた。
そして意識が戻ると、彼女は森の中に立っていた。
暗闇は少しずつ薄らいでいき、月の光が差し込んできた。
自分の近くには何もなかった。
しかし、振り返ると、あの影が微笑んでいるように見えた。

村へ戻る道を探すと、心に引っかかるものがあった。
「あの影を解放しなかったことで、私は安全だ」と自分に言い聞かせた。
しかし、彼女の心の中には恐怖の影が薄っすらと居座り続け、何かが彼女を追いかけている感覚が離れなかった。
村に戻ると、村人たちは美奈子の奇行を不審に思い、決して近づかないように囁き合った。

彼女は心の底からこの村を離れたかったが、封印された闇は決して彼女から離れることがなかった。
どこにいても追い続けるその存在、梶浦の“追”が、悪夢のように彼女の心を蝕んでいく。
次第に美奈子は、自分が村を出たとしても、決して永久に逃れることはできないという現実に気づくのだった。
彼女の周囲には、いつでも追いかけてくる影の気配が漂っていた。

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