神々の住まう静かな森。
その森には、古代からの神々の神殿がひっそりと佇んでいた。
人々はその神殿に祈りを捧げ、神々の恵みを受けようとした。
しかし、近年、神々の声が聞こえなくなり、神殿は次第に人々から忘れ去られていった。
ある日、若い女性、名を結衣は、神殿に足を運ぶことに決めた。
彼女はかつての栄光を取り戻したいと願う村の祭司であり、心のどこかで神の加護を失ったことを悔いていた。
たくさんの人々が神々への信仰を捨てた今、彼女はその神殿の役割を再び呼び覚ますことを夢見ていた。
結衣は神殿の入り口に立ち、深呼吸をして中に入った。
神殿の中は静寂に包まれ、ただ空気だけが重く感じられた。
彼女は祭壇の前に立ち、神々への祈りを捧げる決意を固めた。
しかし、何も起こらなかった。
神々の姿は見えず、その声も響かなかった。
彼女は肩を落として神殿を後にしようとしたとき、不意に背中に冷たい感触を感じた。
振り返ると、何かが彼女を見つめている。
その視線は彼女の心の奥底まで突き刺さるようなもので、思わず息を呑んだ。
そこには、一つの古びた像が立っていた。
その像は、失われた神の姿を象っていたと言われるものだった。
像の前に近づくと、結衣は耳元で囁き声を聞いた。
「私を呼び覚ましてほしい…」その声は澄んだものであったが、同時に悲しみを帯びていた。
彼女はその声が何か特別なメッセージであると感じ、恐怖を超えて像に手を触れた。
その瞬間、像から眩い光が溢れ出し、結衣は見たこともない景色が広がり始めた。
目の前には、神々が生き生きと存在している光景が映し出され、彼女はその神々の中に吸い込まれるように感じた。
しかし、その光景は次第に曇り始め、彼女は神々からの託宣が消えていくのをただ見つめるしかなかった。
「功を成すためには、失うものがある」と彼女の心に響く言葉があった。
それは彼女が求めていた「の」だった。
彼女は、その神殿に自らの信仰を捧げ続けることで、神々の声を再び呼び戻す使命を抱いた。
翌日から、結衣は神殿に通い続け、毎日のように祈りを捧げた。
村人たちも彼女の姿に影響され、少しずつ神々への信仰を取り戻していった。
しかし、その努力の中で、彼女は次第に体力を失い、毎晩のように夢の中で神々からの託宣を受けるが、それは何かの代償を求めるものであった。
ある晩、結衣は夢の中で神々に迫られた。
「あなたが手に入れた『の』は、あなた自身の存在が代償となる。」その言葉に心が揺れたが、彼女は決意を固めた。
伝えられる守りを再生させるために、自らを捧げる覚悟を持っていると。
結局、村人たちはかつての御神信仰を復活させ、彼女もまた神々の使者としてその名を刻むこととなった。
しかし、言葉通り彼女は村の一部として生き続けることはできず、神殿の一部となってしまった。
彼女の存在は神々の力となり、その神殿は再び神々の声が響き渡る場所へと変わっていった。
人々は結衣の物語を語り継ぎ、「失うことは新しい道を開く」という教訓を心に留めながら、神々への信仰を持ち続けた。
彼女の受け取った使命が村を守り続けるのだと信じて。
彼女の「居」は、神々の声と共に永遠に続いていくのだった。