『眠りの書と消えた友』

ある日の放課後、田中という少年は、友達と一緒に校舎の裏山で遊ぶ約束をしていた。
毎日のように遊んでいた彼らだが、今日は特別な日だった。
仲間である佐藤が、最近体験した不思議な話を聞かせてくれるというのだ。

待ち合わせの時間、田中と佐藤、そして鈴木の三人は指定された場所に集まった。
夕暮れ時、薄暗い校舎の影が長く伸び、何とも言えぬ eerie な雰囲気を漂わせていた。
佐藤は目を輝かせて、自身の体験を語り始めた。

「最近、学校の旧図書室に近づいたことある?あそこ、誰も近寄りたがらない場所なんだ。でも、僕はちょっと勇気を出して行ってみたんだ。」

佐藤の声は少し震えていた。
鈴木は興味津々で耳を傾けている。

「図書室の中には古い本がたくさんあったんだけど、その中の一冊が妙に惹かれて、取ってみたんだ。表紙には『眠りの書』って書いてあった。開いてみると、変な呪文が載っていて…」

田中はまだ子供じみた好奇心を抱えていたが、どこか不安を覚えた。
「それって、怪しい本じゃないの?やめたほうがいいよ。」

「でも、友達に試してみようって思ったんだ。夜になってみんなでやろうと約束したんだけど…その日は、友達が急に病気で来られなくなった。」

佐藤は続けた。
彼の表情は緊張感に満ちていた。
「その夜、一人でやってみることにしたんだ。呪文を唱えたら、周りの空気が変わった感じがした。まるで、誰かが自分を見ているような…」

その時、鈴木は急に出し抜けに声を上げた。
「それはダメだ!呪文なんて、知らないうちに何かを呼び寄せちまうかもしれんぞ!」

佐藤は驚いたようだったが、いつもの落ち着きを戻して続けた。
「その日はそれで終わったと思った。けれど、次の日からおかしな現象が起き始めたんだ。友達が帰り道で無視されることが多くなった。部活の仲間にもまったく相手にされないって、どういうことだ?」

田中は不安を感じた。
自分自身も、最近周囲の友達から少し距離を感じていた。
彼は心の中で「これが本当に呪いのせいなのか?」と考え始めた。

「それだけじゃない。旧図書室にいると、肩を叩かれる感覚がすることもあったんだ。一瞬の出来事だけど、誰もいないのに…。」

鈴木は眉をひそめて言った。
「それ、引き寄せたんじゃないかと思うぞ。気をつけろよ。」

その夜、三人は不安な気持ちを抱えたまま解散した。
田中は母親が呼ぶ声を聞きながら家に帰った。
だが、寝る前に何かが気になって、どうしてもその『眠りの書』のことが頭から離れなかった。

「完全に無視されているわけじゃないだけ、良かったか」と心の中で自分に言い聞かせつつ、夢の中で旧校舎の図書室が映し出される。

そこには、かつての友達の姿があった。
彼らは田中を待っていた。
だが、彼の背後には暗い影が見え、徐々に近づいてきた。
彼は恐ろしさでうめいた。
目を覚まし、すぐに携帯電話を手に取った。

しかし、現実はより恐ろしいもので、そこには何もなかった。
彼の友達が急に姿を消し、彼だけが時間に取り残されたようだった。
田中は不安に駆られ、すぐに自分から連絡を取ることにした。

だが、全く返事がない。
何度も送るが、まったく音沙汰がない。
彼は夜中、ふと自分の目の前に現れた影に驚いた。
暗闇の中から顔を覗かせたのは、かつての友達の一人だった。

「帰りたくない…」彼は呟いていた。
その声は確かに佐藤のものだったが、目は疲れ切っていた。

田中は恐ろしかった。
全ての事象は、この本から始まった気がしてならなかった。
そして、自分もこの悪夢の一部になっていると感じた。
鈴木と佐藤に何か起こっている、彼らを救うためには何か手を打たなければ…と、彼は一人思いを馳せた。

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