修は友人たちと都市伝説を語り合うため、古びた公園に集まった。
夜のしじまの中、彼らは怪しい噂を耳にし、特に「鳴く公園」という奇妙な伝説に興味を示した。
そこでは、誰も見たことがない霊が、人の心の悩みを分かち合うために、夜になると不気味な音を立てて現れるというのだ。
「音って、どういう音なんだろうな?」友人の直樹が疑問を投げかけると、修は昔からの経験を語り始めた。
「俺の友達がここで音を聞いたって言ってた。その音は悲しげで、心が締めつけられるようなものだったらしい。」
すると、他の友人たちも恐れおののいた表情を浮かべ、夜の公園の雰囲気が一層不気味になった。
修自身も心の奥底に不安を感じ始めていたが、彼は好奇心に駆られ、その場所を訪れることを決めた。
数日後、修は一人で公園を訪れることにした。
心には恐れと期待が混ざり合っていた。
周囲は静寂に包まれ、月明かりに照らされた木々の影が揺れていた。
ふと、彼は心の中で「本当にその音が聞こえるなら、俺はどう立ち向かうんだろう」と思った。
時間が経つにつれて、修は不安に押しつぶされそうになりながらも、公園の中央にあるベンチに腰を下ろした。
そこで待つこと数分、周囲の静けさを破るように、微かに音が響き始めた。
それは確かに人の声のようであり、同時に風に乗って運ばれるさざ波のようなものであった。
修は息を呑み、静かに耳を澄ませた。
音は次第に大きくなり、修の心の中に潜む不安が引き出されていく。
「助けて」と語りかけるような声が、その音の中に混じっていた。
彼は立ち上がり、その音の正体を探ろうとした。
しかし、周囲には誰もおらず、ただ音だけが心の中で反響していた。
「これは何なんだ…?」と修は思った。
その声は彼の過去の痛みを刺激し、忘れかけていた思い出が蘇ってきた。
孤独や後悔、失ったものへの渇望—それが音となり、彼の心に分け入ってくる。
急に、修は心の奥から声が聞こえてくるのを感じた。
「お前はいつも一人だったな、誰にも話せずに閉じ込められていた」と。
その瞬間、彼は過去の自分を思い出した。
学生時代、大切な友人を喪ったこと、孤独な日々、自分の心の声を誰にも聞いてもらえなかったこと。
それが音となって、彼の心を埋め尽くしたのだ。
修は音に引き寄せられ、体が自然とその音の方向へ向かっていく。
心の中で感じていた詩的な声が、まるで彼を導くかのように。
「もう一度、心を開け。誰かに話すことができれば、その音も消えるかもしれない」と、彼は思った。
その瞬間、修の心の中に温かさが広がった。
不安や恐れが消え、彼は一人ではないことを思い出した。
友人たちに、自分の思いや感情を話すことを決意し、少しずつ声を上げていく自分を感じた。
音は徐々に穏やかなこれには変わり、彼は胸の奥にあった重しが解放されるのを感じた。
公園を後にする修の心は、かつての不安や悩みから解放されていた。
そして、その夜の出来事は、彼にとって重要な意味を持つ出来事として心に刻まれることとなった。
音に誘われたおかげで、本当の自分を見つけ出し、心の鎖が解き放たれたのだ。