木々の梢を揺らす風が不気味な音を立て、村の外れにある古びた神社が佇んでいた。
そこは「鳥落とし神社」と呼ばれ、昔から不吉な噂が絶えなかった。
村人たちは、この神社には一度も足を踏み入れたことがない。
特に、鳥たちが寄り付かないことから、神社は、何か恐ろしい存在が棲んでいる場所だと恐れられていた。
新しく転校生として村に引っ越してきた佐藤優香は、友人たちからこの神社の噂を聞かされるうちに興味を持った。
彼女は好奇心が旺盛で、村の伝説に魅了されてしまった。
ある晩、満月が光る中、友人の健太と恵美を誘って神社へと足を運ぶことにした。
「ねぇ、あの神社の奥に何があると思う?」優香は、友人たちに話しかけた。
健太は半信半疑で「多分、何もないと思うけど。でも、行ってみるか?」と答えた。
恵美は不安げに眉をひそめ、「本当に行くの? 噂には何か隠された真実があるかもしれないよ」と言ったが、好奇心に負けた二人は進むことにした。
神社に到着すると、落ち葉の上に沈んだ神社の鳥居があった。
その影は長く、不気味にたたずんでいる。
優香は無意識にその鳥居をくぐり、「ここが鳥落とし神社か…」と感嘆した。
すると、突然、静寂の中から鳥の鳴き声が響いた。
「聞いた? 鳥の声だ!」健太が言った。
「でも、どうしてこの神社に?」
優香はその方を見つめたが、実際には鳥が見当たらなかった。
心に不安を抱えつつも、彼女は神社の奥へと進んだ。
すると、ますます不気味な空気が漂ってきた。
背後で何かが動く気配を感じ、振り返ると、そこには黒い影が見えた。
それは鳥の形をしており、次第に近づいてくる。
優香は後ずさりし、動けなくなった。
「どうしたの、優香?」健太が声をかけた。
「影が…近づいてくる。」優香は恐怖に震えながら言葉を返す。
恵美は懸命に優香を守ろうと、「近寄らないで!」と叫んだが、影は無視して優香の肩に止まった。
その瞬間、優香の身体が強い引力に引かれ、彼女は神社の奥へと引き込まれていく。
健太と恵美は必死に後を追ったが、影が彼らの視界を遮り、二人は前に進めなくなった。
「助けて!」優香の声が響く。
「私を…解放して!」
影は優香を中心に集まり、何かが彼女の中に入り込む感覚がした。
彼女の視界が次第に暗くなり、まるで他の誰かの思考や感情が侵入してくるように感じた。
そして、優香は自分の意識が薄れていくのを感じた。
神社の奥では、何か過去の秘密が成り立とうとしていた。
次の瞬間、優香は冷たい風に包まれ、深い闇の中に落ち込んでいった。
彼女は、影が語りかける言葉に耳を澄ました。
「申し訳ない。自由にしてほしい…私は忘れられた鳥たちの姿なのだ。」
優香は、自らが「鳥落とし神社」に封じ込められた存在の一部にされていることを理解した。
彼女は、もはや人間ではなく、神社の呪縛によって鳥の魂として成り果ててしまった。
だが、ある瞬間、彼女の心に強い光が差し込み、自身の意志を取り戻した。
「私たちは自由を手に入れる!」優香は叫んだ。
その瞬間、周囲の影たちが驚き、後退し始めた。
優香の内なる力が彼女を解放へと導く。
闇が徐々に薄れ、彼女は健太と恵美の姿を見つけた。
彼らの不安そうな顔を見て、優香は心からの叫びを放った。
「戻るよ。私たちは逃げる!」
三人は神社から駆け出し、満月の光の中に飛び込んだ。
その瞬間、神社の影がゆっくりと消えていった。
村へ帰る途中、優香の心には重いものが残っていた。
「鳥たちの魂は果たして解放されたのだろうか?」恐怖と共に、彼女の心には新たな疑念が植え付けられていた。