「霊の光、あかりの願い」

夜が訪れると、静まり返った村の空に、星がひときわ輝いていた。
その中でも一際明るく、瞬く星は村人たちの間では「霊の光」と呼ばれていた。
村の伝説によれば、その星は、かつてこの地に住んでいた一人の少女の魂が天にあがり、光り輝いているのだという。

彼女の名は、あかり。
10年前、彼女は突然失踪した。
村の人々は彼女を探し、泣き叫ぶ家族の姿を見守っていたが、あかりはとうとう見つかることがなかった。
村は悲しみに包まれ、子供たちは彼女の名前さえも口にすることがなくなった。
しかし、あかりを忘れないまま村を去った者たちの心に、彼女の存在は深く刻まれていた。

数年後、ある夏の夜、村の若者たちの間で、「光の宴」という行事が行われることになった。
目的は、あかりの霊を慰めるため。
この日のために、村人たちは星見台を作り、明るい光を放つランタンを準備した。
彼らは、あかりが天から見守っていることを信じ、その存在を感じたいと思っていた。

宴が始まると、若者たちはランタンを手に取り、夜空を見上げながら、あかりの名前を呼び続けた。
「あかり、戻ってきて!」その声が響くたびに、周囲の空気がわずかに揺れ、風が優しく彼らの髪を撫でていく。
瞬く星がまるで応えるように、ひと際輝きを増していった。

しかし、宴が進むにつれ、突然空が暗くなり、雲がかかり始めた。
村人たちはその異変に気づかず、まだあかりを呼び続けていた。
天が何かを訴えるように、雷鳴も聞こえてきた。
その瞬間、彼らの目の前に霊的な存在が現れた。
それはあかりだった。
彼女の周りには、青白い光がまとわりつき、彼女の笑顔はまるで生きていた頃と変わらなかった。

「私を忘れないで…」あかりの声が風に揺られながら、彼らの耳に届いた。
驚きと恐怖が入り混じった若者たちは、立ち尽くすことしかできなかった。
彼女は、彼らが求めていた光そのものであった。

「どうか、終わらせないで…」彼女は続けた。
「私の存在を消さないでほしいの。」その瞬間、村人たちは彼女の思いが込められた光を直に感じた。
彼女は空に還ることができたはずなのに、未練があったのだ。
彼らは彼女の声に呼応するように、「あかり、私たちはあなたを絶対に忘れない!」と叫んだ。

その瞬間、豪雨が彼らを襲った。
しかし、それは恐ろしいものではなく、むしろ解放の雨だった。
あかりの周りの光は一層強まり、彼女は天へと昇っていく。
その時、村人たちは彼女の心の中にある思いが、自らの心にも宿ることを感じた。

あかりの姿は雲の中に消えていったが、彼女の光は村の空に残り続けた。
それは、村人たちが彼女を思い出すことを望む、彼女からの願いとなった。
そして、あかりを忘れずにいる彼らの思いは、星となっていつまでも輝き続けた。

夜が明けると、村人たちは空を見上げ、あかりの光を見つめながら笑顔を交わした。
彼女は天へと旅立ったが、その思いは決して消えることはなかった。
村人たちの心に、あかりの光は永遠に生き続けるのだった。

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