彼女の名は春菜。
小さな村に住む若い巫女だった。
代々、この村では巫女が神社を守り、村人たちの祈りを神様に届ける役割を担ってきた。
しかし、最近、村の人々に不吉な噂が広がっていた。
数人の者が突然、命を落とすという現象が起き始めたのだ。
村ではその原因を探ることができず、恐怖が広がるばかりだった。
春菜は、このような悲劇を止めるために、神々の声を聞くための儀式を行うことに決めた。
彼女は神社の奥にある祭壇の前に立ち、古いお札を取り出した。
「どうか、神様、私に答えをお与えください」と心の中で祈った。
すると、静寂が辺りを包み込み、空気がひんやりと冷たくなった。
その瞬間、電気が一瞬だけ消えた。
明かりを失った神社の中、春菜は不安に駆られた。
しかし、彼女は幼い頃からこの道を選んできた巫女だ。
恐れることはないと自分を鼓舞し、再び祈りを続けた。
すると、奇妙な光が祭壇の上に現れ、それが次第に形を持っていくのを見た。
突如、空気が振動し、彼女の耳に誰かの叫び声が届いた。
「春菜！助けて！」その声は、春菜がかつて大切にしていた親友の声だった。
驚いた彼女は、思わずその声の主を探し求めた。
目の前に現れたのは、幽霊のように透明な姿の彼女の親友、美咲だった。
春菜はすぐに彼女が亡くなったことを思い出し、胸が痛む。
「美咲、あなたは…どうして私の前に…」春菜は動揺しながら尋ねた。
美咲は悲しい表情で歩み寄り、「この界から抜け出すことができないの。私が亡くなった後、何かが私を束縛しているの。」と話す。
「何が起こったの？あなたに何があったの？」春菜の声は震えていた。
美咲は、あの事故の日のことを語り始めた。
彼女は、村の外れにある山で一人遊んでいたとき、電気のような閃光を見た。
その瞬間、彼女は意識を失い、目を覚ましたときには、すでにこの世にはいなかった。
「その時、電気の光が私を引き寄せたの…何か悪いものに。だから、私を解放して。私が転んだ場所に行って、その秘密を探って。そこに、私を妨げているものがあるはず。」美咲の言葉は切羽詰まっていた。
春菜は決心した。
美咲のため、彼女を解放する手助けをすることを。
彼女は美咲の言った場所へと向かう準備を始めた。
その夜、薄暗い月明かりの下、春菜は村の外れに向かった。
山の奥へ進むにつれ、不穏な電気のエネルギーを感じた。
春菜は心を静めながら、暗い道を進み続けた。
ついに、彼女が美咲の言った場所に辿り着くと、そこには異様な光景が広がっていた。
地面には、不気味な模様が浮かび上がり、まるで何かが彼女を呼んでいるかのようだった。
春菜は恐れを振り払い、模様の中心に立ち、心から祈った。
「どうか、私の親友を解放してください！」その瞬間、空がどす黒くなり、雷鳴が轟いた。
電気が彼女を包み込み、周囲が眩しい光に満ちた。
目を閉じ、その光を受け入れると、彼女の心の中に何かが解ける感覚があった。
すると、目の前に美咲の姿が現れた。
「ありがとう、春菜！私、自由になれるよ！」その言葉と共に、美咲は光の中に吸い込まれていった。
春菜は胸が熱くなり、涙を流した。
彼女が美咲を助けたことを感じ、無事に彼女の魂が解放されたと信じた。
しかし、同時に彼女の心には、新たな謎と恐怖が芽生えていた。
亡くなった者たちの声が、今もどこかで響いているのではないかという不安が。
その後、村では不幸な事故が収まり、人々は平和な日々を取り戻した。
しかし、春菜の心に刻まれたあの出来事は決して忘れられることはなかった。
彼女は巫女としての役割を果たし続け、あの夜の謎が再び現れることを恐れ続けたのだった。
