修は、静かな山あいの村に住む若者だった。
彼は、日々の雑務から解放されるために、仲間たちとともにアウトドアを楽しむことが大好きだった。
しかし、最近、村での不思議な現象が彼の心を不安にさせていた。
村の周辺で、「電」という不思議な音がするようになったのだ。
その音は、まるで何かが空間を引き裂くような鋭い音で、村人たちはそれを「ざ」と表現していた。
ある日の晩、修は友人の友田と共に、村の外れにある古い神社を訪れることにした。
その神社は、村の人々から長い間忘れられていた場所であり、むしろ「近づいてはいけない場所」とされていた。
神社の近くに立つと、修は何かが彼の胸を強く締める感覚を覚えたが、友田が「大丈夫だよ、何も起こらないさ」と笑って見せたため、無理やりその感覚を振り払った。
神社の境内に足を踏み入れると、周囲は異様な静けさに包まれていた。
すると、突然、辺りが暗くなり、電の音が近づいてきた。
それは徐々に大きくなり、焦燥感を掻き立てるように響き渡った。
修は思わず友田の手を握りしめた。
彼もまた、恐怖の表情を浮かべていた。
「な、何なんだ、これ?」修の動揺を見逃さず、友田は周囲を見回しながら問いかけた。
「なんか、変な気配を感じるね…」その瞬間、彼らの前に、ぼんやりとした光が現れた。
それはまるで、空間を引き裂くように、宙に浮かんでいた。
「やっぱり、ここに来るんじゃなかった…」友田が言いかけたが、その言葉が終わる前に、光は彼らの目の前で急に痙攣し、強烈な電光が放たれた。
光の中に、形のない何かが見えたが、それはどこか懐かしく、また恐ろしいものだった。
まるで、村の歴史を飲み込み、過去の怨念がうねりをもっているようだった。
修は恐怖に押しつぶされそうになったが、内なる何かが彼を奮い立たせる。
友田が恐怖から逃げていく中、修はその場に立ち尽くした。
「これは、私たちの村の過去に関係している…」何かを感じ取った彼は、自分の内面と対峙することを決意した。
村の歴史、そこに秘められたわだかまりが、今、目の前に現れている。
そう自らに言い聞かせ、彼はその光に向かって一歩を踏み出した。
「私たちはあなたを忘れていない。私たちに伝えたいことがあるのなら、教えてくれ」と心の中で叫んだ瞬間、光が一瞬静寂に包まれ、やがて強いざわめきに変わった。
それはまるで、過去の声が彼に呼びかけているように感じられた。
「修…」
その声は、村の歴史の中で埋もれていた無数の悲しみを携えていた。
修はその声に従って、心を開いた。
彼の中で何かが揺らぎ、過去の怨念が成仏する手助けをしている感覚が湧いた。
「恐れずに受け入れることが、あなたたちの成仏につながる…」
次の瞬間、光が一気に拡大し、静寂に戻った。
修はその場にひざまずき、やがて村の神社から発せられていた電の音やざわめきが、静寂の中に吸い込まれていくのを感じた。
友田も恐る恐る戻ってきて、修の姿を見て驚いた。
「お前、一体何があったんだ?」
「わからない。でも、何かが終わった気がする。」修はそう答えながら、心の奥に新たな決意が生まれていくのを感じた。
過去を受け入れ、村をより良い場所にするために、彼はこれからの自分の役割を見つけたのだった。
それ以後、修は村人たちに神社の大切さや、過去の教訓を伝えるよう心がけるようになった。
あの晩の出来事は彼の中で生き続け、その声を伝える者としての新たな一歩を踏み出させることになった。