「雪の中の影」

ある寒い冬の夜、雪が静かに降り積もる中、田舎の学校に通っていた私たちは、放課後の教室で最後の掃除をしていた。
学校はすでに薄暗くなり、外の風景は白一色に包まれていた。
私たちは友人たちとふざけ合いながら掃除を終え、帰り支度をしていた。
しかし、その時、一人の友達がふと廊下を見つめて言った。
「なんか…誰かいるみたい」

みんなが彼女の視線を追うと、確かに廊下の奥に人影が見えた。
驚いて一瞬黙り込む私たちだったが、すぐにそれが誰なのか分からなかった。
昨今の学校では、放課後に誰も残っていることは少ないのに、おかしいと思った。
私たちは遠くからその人影をただじっと見つめ、誰か来たのかと不安になった。

その人影はそのまま動かず、私たちが何をしているのかを見ているようだった。
少し勇気を出して呼びかけてみることにした。
「おい、誰かいるの?」しかし、返事はなく、ただその影はじっと佇んでいるだけだった。

誰かが「見に行こう」と提案したものの、恐れが先立って、しばらく誰も動こうとしなかった。
結局、恐怖心を抑えて、数人がゆっくりと近づくことにした。
その瞬間、影が少し揺れたように見え、またもや恐怖が全身を包み込んだ。
私たちの後ろでは、他の友人たちが小さな声で呟いているのが聞こえた。
「帰った方がいいよ…」

影の近くに着いた私たちが目を凝らして見ると、それは一人の少女だった。
長い黒髪を揺らし、白いブラウスに黒いスカートを身に着けていたが、彼女の顔はまるで真っ白な紙のように無表情だった。
その瞬間に、何かが私たちの心に重くのしかかる。
この場にいることがいかに危険かを直感した。

「大丈夫?」勇気を振り絞って声をかけたが、少女は自分の方を振り返ることもなく、ただ目の前の床を見つめている。
静けさだけが響く中、仲間の一人がしゃがみ込んで少女の顔を覗こうとした瞬間、突然その少女が振り返った。

その目は空洞のように真っ黒で、心臓が凍りつくような恐怖を覚えた。
私たちは悲鳴を上げ、その場から逃げ出した。
しかし、逃げた先には、今まで暖かい教室の明かりが感じられた場所が全て消えていた。
廊下すら不気味なほど静まり返り、何もかもが異次元のようだった。

数人の友人と一緒に、外に飛び出し、雪の上を全速力で走った。
学校の裏口に到着した時、誰もが安堵の息をついた。
しかし、そのときふと思い出したのは、教室で過ごした時間だった。
放課後に掃除をしながら笑い合っていた友達。
甘い思い出の中に、それは異様な影となって忍び込んでいたのだ。

後日、学校に行くと、校内でその少女の存在についての噂が広がっていた。
誰も知る者はいないというが、しばらく前にここで事故にあった生徒だと聞いた。
学校の中でも、何かが変わってしまったことを感じていた。
私たちの心に深入りした恐怖は、その少女の翳を残し、決して忘れられない記憶として刻まれていた。
彼女はもう帰れないのかもしれない。
今もどこかで、私たちを見つめ続けているのだろう。

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