それは小さな村の外れにある、ひっそりとした古い神社。
そこには「隠れ神」と呼ばれる神様が祀られていた。
村人たちはこの神社を訪れることは少なく、誰もその神の存在について深く考えることはなかった。
しかし、ある晩、幼い少年、健太は友達と肝試しをすることになった。
彼らは「隠れ神」の神社を訪れることを決めた。
夜になると、神社の周りは静まり返り、まるで異次元と繋がっているかのような暗闇に包まれた。
健太と彼の友達は、神社の古びた鳥居をくぐり、胸を高鳴らせながら境内に踏み込む。
空気は冷たく、どこか異様な雰囲気が漂っていた。
友達の一人が「ねぇ、早くお参りしようよ」と言うが、健太はその気にはなれなかった。
「怖いものなんてないさ、健太!」友達が鼓舞する。
しかし、健太はこの神社の秘密を知っていた。
「隠れ神」は視界に現れることはなく、ただその気配を感じるだけだと。
友達はそれを冗談半分に捉え、神社の中央にある小さな社に向かって走り寄る。
健太は不安を抱えたまま、後ろからついて行った。
その瞬間、神社の中から微かに「ま、待って……」という声が響いた。
すぐに健太は立ち止まり、恐怖に満ちた表情で周囲を見回した。
友達たちの笑い声は次第に消え、静寂だけが残った。
不安な気持ちを抱え、健太は社の裏手に回る。
すると、目の前に異様な光景が広がっていた。
両手を広げた人物の姿が、無数の影に囲まれていたのだ。
その人物は壮年の男で、目は無表情で健太を見つめている。
「お前も隠れ神の力を受け入れに来たのか?」その声は低音で、まるで何かが重なり合うように響いた。
健太は恐怖で身動きが取れず、ただその場に立ち尽くす。
「お前の中にはまだ、隠れ神の可能性がある」と言われ、彼は背筋に冷たい汗を流した。
影が男の周りに渦を巻くと、ふと彼の足元に一つの玉石が現れた。
様々な色彩を持つその玉石は、美しさとは裏腹に、どこか不気味な光を放っていた。
健太は思わず手を伸ばし、それを掴み取った。
すると、瞬時に目の前の男が崩れ、影が解き放たれるように消えていった。
その瞬間、健太はその玉石に呼び寄せられるように目を閉じた。
心の奥深くに、静かに流れ込む声を感じる。
「私はお前の一部だ」と、その声は繰り返す。
異様な感覚に包まれながらも、彼は自分の中にある「隠れ神」の力を感じ取った。
次の瞬間、健太は目を開けた。
そこには平常の神社が広がっていたが、心の中には何かが触れ合った感覚が残っていた。
その力を持つことで、彼は神社の不思議な現象に包まれ、運命を共にすることを選んだのだ。
村に戻った健太の目は、彼が持つ脱出できない秘密を映していた。
「隠れ神」と共に生きることを選んだ彼は、その後の生活で他人の目には見えないが、自身の内に「影」を抱えることになった。
そして、その影が時折彼の周りに現れ、彼を見つめるのだった。
その影は今や彼の一部であり、彼自身の存在と化していた。
そして、健太はその影と共に過ごす毎日を受け入れる中で、自身の成長を体感し続けた。
影はもはや恐怖ではなく、彼にとっての理解を示す存在となっていたのである。