ある小さな町に、古びた計(はかり)の神社があった。
その神社は長い間忘れ去られ、ひっそりとした森の中にひっそりと佇んでいた。
町の人々はその神社に寄り付くことはなく、ただ「影が隠れている」という噂だけが語り継がれていた。
主人公の和也は、ある日友人たちと肝試しをすることに決め、その神社を訪れることにした。
友人たちの中には、勇敢な性格の拓也や、怖がりの美咲もいた。
和也は笑顔を浮かべながら、盛り上げ役に徹しようと決めた。
神社への道を歩く中、和也はどこか不気味な気配を感じ取った。
薄暗い森の中で、時折風が吹くたびに、木々がざわめく音が耳に入る。
その錯覚から来る恐怖心を払拭するため、和也は友人たちに笑い話を振った。
しかし、それは全く効果がなく、むしろ彼らの緊張を増すだけだった。
神社にたどり着くと、周囲は静まり返り、まるで時間が止まったかのようだった。
周囲の木々が影を作り出し、その影がまるで生きているかのように揺れている。
和也たちは神社の境内に入ると、そこで不思議な輪が地面に描かれているのを見つけた。
それは大小さまざまな円が幾重にも重なり合い、まるで封印のように見えた。
拓也はその輪に近づいて、「これ、何だと思う?」と問いかけたが、和也は答えを返さなかった。
実は彼も、この輪が何を意味するのか分からなかったからだ。
その瞬間、天候が急に変わり、辺りは夕暮れ時に包まれた。
神社の影が伸び、恐ろしい雰囲気が漂い始めた。
突然、美咲が悲鳴を上げる。
「あの、影が動いてる!」和也と拓也は一瞬驚いて振り返るが、周囲を見渡しても何も感じられなかった。
しかし、美咲の恐怖に触発され、和也も恐れを感じ始めた。
その時、突然、神社の中から何かが現れた。
真っ黒な影が音もなく近づいてくる。
影は次第にはっきりとしてきて、何か人の形をしているようにも見えた。
「隠れた者たちよ、ここへ来い…」かすかな声が響く。
全員が凍りついた。
和也は、どうにかして逃げようと考えたが、体が硬直して動けない。
拓也は恐れを感じたようで、思わず「逃げよう!」と叫び、友人たちを急かした。
しかし、その声も影には届かず、友人たちの元へ向かって影は伸びていった。
和也は思わず叫んだ。
「ここから出よう!輪から離れろ!」友人たちはその言葉を聞いて、何とか動き出そうとした。
しかし、美咲はその場に立ち尽くし、影に呪縛されているようだった。
「美咲、早く!」和也は彼女を引き戻そうとしたが、影の力が美咲を捕らえているかのように見えた。
和也は無我夢中で彼女を引っ張り、ついに輪の外へ引きずり出した。
しかし、その瞬間、彼女はもう一度影の中で捕らえられてしまった。
「私は…隠れた者の一人…」と、美咲はすすり泣きながら言った。
「私はこの輪に輪廻するために選ばれたの…」
和也は何とか美咲を救いたかったが、その熱意も影の力には敵わなかった。
友人たちも彼女を助けようとしていましたが、影の力は強大で、逃げることのみができる道だった。
神社の境内を去る時、和也は背後に振り返った。
美咲の姿が消え、影の中に吸い込まれていくのを見た。
その瞬間、心の奥に深い悲しみが広がった。
彼は後悔と恐怖に襲われながら、何とか友人たちと共に森を抜け出した。
それからしばらくの間、和也は美咲の姿を思い出しながら日々を過ごしていた。
しかし、彼の中には、その計の神社での出来事が消えることはなく、常に影が隠れているように思えた。
彼はその影を恐れつつも、再びその場所へ行くことはなかった。