ある静かな田舎の村に一本の古びた路があった。
村人たちの間では、その路にまつわる不気味な噂がささやかれていた。
誰もがその道を避けるようになり、ただ淡々と日常を送り続けていた。
しかし、少年の高橋健二だけは、その噂に好奇心を抱いていた。
ある夜、月明かりが煌めく中、健二は一人、恐る恐るその路に向かった。
村人たちが恐れた「闇の中に潜む光」を自らの目で確かめるためだった。
しかし、彼の心には不安が広がり、ふと足が止まる。
路の両側には黒い木々が立ち並び、まるで彼を取り囲むようにそびえ立っていた。
路は細く、ひどく寂しい。
「大丈夫だ、ただの噂だ」と自分に言い聞かせ、健二は再び一歩を踏み出した。
その瞬間、目の前に微かな光が現れた。
それは彼に向かって優しく揺らめくような光であり、どこか魅惑的だった。
健二は胸が高鳴るのを感じながら、光に近づいていく。
闇の中から、あの光は何を語ろうとしているのか、彼の心の中に問いが湧き上がった。
しかし、彼が光に近づけば近づくほど、周囲の闇がますます濃くなるように感じられた。
光は彼を誘うように震え、何かを訴えているようだった。
不安と興奮が交錯する中、健二はその光に触れてみたくなった。
光に手を伸ばした瞬間、彼の身体が突然重く感じ、まるで何かに引き寄せられるように足元が不安定になった。
とてつもなく強い力が彼の心をまとめていく。
「何かが……恐ろしいことが起きる」と直感した。
健二は振り返り、元来た道を戻ろうとしたが、その時、光が瞬時に彼の視界を奪った。
深い闇の中にいるような感覚に襲われ、彼はただその光に飲み込まれていった。
恐怖が彼を支配し、心臓の鼓動が速まる。
すると、不意に周囲に多くの影が現れ、彼を囲むように立ちついていた。
彼の心臓は今にも飛び出しそうだった。
「助けて!」と叫びたい衝動に駆られたが、声が出なかった。
影たちは薄暗い顔を覗かせ、彼に向かって囁くように話しかける。
「何を求めるのか、人よ。恐れを捨てることができるのか?」その瞬間、彼はついにこの場所への好奇心が誤りだったのだと悟る。
光は依然として彼を引き寄せ続け、影たちは彼に何かを確かめるかのように見つめている。
彼は今、光に導かれるか、影に飲み込まれるかの選択を迫られていた。
健二は震える声で答えようとするが、口が重く閉ざされたまま動かなかった。
「光を求めた者が、影に飲まれた」と影は囁く。
そして、彼の心の中にある「棄てたくなるような恐れ」が浮かび上がり、彼を支配していく。
どうしようもない絶望感が彼の全身を駆け巡り、心の奥深くにある恐れが現実のものとなった。
彼はその場から逃げられないまま、光の中で自らの存在を消していく。
最後に彼が見たのは、その光がもたらす闇の中の冷たい微笑みだった。
そこにいるのは、彼に向かって微かに笑う影たちだった。
そして、彼はそのまま闇に飲み込まれてしまった。
その後村人たちは皆、健二が消えたことを知っていたが、彼の名前を口にすることすら恐れるようになった。
古びた路は今も変わらず佇んでいるが、そこに近づく者は誰一人としていなくなった。
闇に潜む光は、いつの日にか誰かを誘い出すのだろうか。
その光は、ただ恐怖を棄てる者へと続く道なのかもしれない。