「闇に映るもの」

ある日、友人たちと遊びに行った小田原。
この町は古い歴史を持つ場所で、特に気になるのは駅の近くに佇む古びた家屋だった。
その家は住人がいないようで、草木が生い茂り、窓は埃で曇り、まるで時が止まったかのように見えた。

友人の一人、隆史が言った。
「あの家、見たことあるか?噂だと、あの中では奇妙な現象が起きるらしいぞ。」興味津々な私たちは、好奇心からその家へと足を運んだ。
その夜、私たち四人は懐中電灯を手に、家の中を探索することにした。

家の中は暗く、しっかりと音を立てる床板が軋み、どこからともなく響く風の音だけが気味悪く響いていた。
やがて、広間にたどり着いたとき、部屋の片隅に古いカメラが置かれているのを見つけた。
それは使い古されたフィルムカメラで、埃まみれだったが、まだ動くようだった。

「これ、使えるかも!」と意気揚々とカメラを手にした隆史は、仲間たちの写真を撮り始めた。
数枚の写真を撮り終えたころ、突然カメラがカシャリと音を立てた。
その瞬間、隆史の表情が青ざめた。
「え、今、撮ったつもりはないんだけど…」

私たちがカメラを覗き込むと、そこには何も映っていなかった。
この家には電気が通っていないため、フラッシュが使われたわけでもなく、ただ不気味な静寂が広がるだけだった。
それでも隆史は気にせず、さらに撮影を続けた。

「もう一回撮ってみて!」と私が声をかけると、隆史はカメラを構え直した。
その時、何かが背後で動く気配がした。
振り返ると、見知らぬ女性が立っていた。
見間違いかと思ったが、彼女は薄暗い中でしっかりとこちらを見つめていた。

恐怖を抱きつつも、彼らはそのままその女性を撮影した。
カメラのシャッター音が響き渡る。
再び、何も映らない空白の写真が現れた。
「なんだこれ!」

そのまま家の中を彷徨っていると、異様な気配がどんどん強くなっていく。
気のせいかと思ったが、心臓が高鳴り、胸が熱くなってきた。
誰かがこちらを見ているような感覚に襲われ、私たちは恐怖に駆られた。

やっとのことで外に出ると、夜空には星が瞬いていた。
しかし、カメラを持っていた隆史は、何かに取り憑かれたような表情をしていた。
「もう一度、あの女性を撮りたい」と呟く彼の目は、どこか狂気じみていた。

「やめよう!もう帰ろう!」と友人が呼びかけるも、隆史は全く聞く耳を持たなかった。
私たちは彼を引き留めようとしたが、彼は振り払って、再びその家の無機質な扉へ向かった。

隆史が再びそのカメラを取り出し、闇に溶け込むように深く入っていく。
友人たちは不安でいっぱいになり、そこから逃げるように帰路に急いだ。
そして、その後、隆史の姿を見た者はいなかった。

数日後、私たちは隆史のことを思い出し、再度その家に行くことにした。
中に入ると、あの古いカメラがまだ置かれていた。
私たちは、恐る恐るそのカメラを手に取ると、フィルムが揺らめくようにして現れる。
ひらめくなかには、隆史と一緒に撮ったかなり気味の悪い写真が次々と現れた。

その中の一枚、薄暗い空間に立つ隆史の後ろで、その女性がどこか不敵な笑みを浮かべていた。
その瞬間、私たちの胸に恐怖が走り抜けた。
そして、その日から、私たちは二度とその場所へ行くことはなかった。
何かが取り憑いてしまった友人を取り戻すことはできなかったのだから。

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