「闇に揺れる罠」

ある静かな夜、佐藤真理は友人と別れ、一人で自宅に向かって道路を歩いていた。
周囲は静まり返り、月明かりが道を薄く照らしているだけだった。
真理は少し不安を感じながらも、急がないといけない、と思いながら足を速めた。

歩いていると、ふと彼女は道の端に小さな明かりが点滅しているのに気づいた。
それは、忘れ去られたような古い街灯の明かりだった。
異様に点滅するその光は、彼女の好奇心を刺戟した。
ただの街灯であるはずがない、何かがあるのではないかと思い、真理はそれに近づくことにした。

近くに着いた時、彼女の視界に映ったのは、不気味に歪んだ木々と、その中に古びた小さな祠だった。
祠の周りには、見たことのない不思議な模様が描かれた石が散らばっている。
それぞれの石には、何かを警告するような文字が燃え立つように書かれている。

「なにこれ……?」

真理は迷ったが、心の奥底から感じる引力に逆らえず、足を進めた。
近づくにつれ、彼女は耳元で低い囁き声を聞くようになった。

「来て、真理。ここには真実がある……」

驚きと恐れが交錯する中、彼女は思わずその声に引き寄せられた。
周囲には誰もいないのに、彼女だけに語りかけるような声音が響く。
「ここにいることを誰も知らない」と、その感情の奥底をくすぐるような声だ。

祠の前に立った真理は、不思議な衝動に駆られて祠の中を覗き込んだ。
中には、薄暗い空気の中で光り輝く小さな箱が置かれていた。
その瞬間、彼女の中には強烈な好奇心が湧き上がり、ボロボロの扉を開けてその箱を手に取った。

箱を開けると、その中には呪文のような文字が書かれた古い巻物が入っていた。
彼女は無意識にそれを手に取り、目を通し始めた。
そこには、「真実を知る者には代償が伴う」という一文があった。

真理はゾクッと寒気が走った。
その言葉の意味を理解する前に、周囲の雰囲気が一変した。
あの囁き声が、今度は高く響き渡って彼女を取り囲んできた。

「真理、あなたは選ばれた。罠から逃れることはできない……」

驚愕し、恐怖に駆られた真理は、その場から逃げ出そうとした。
しかし、足は動かず、まるで何かに縛られているようだった。
目の前には、影の中から浮かび上がるような数人の影。
彼女は思わず叫び声を上げた。

「助けて! 誰か!」

その時、彼女は一斉に彼女に向かって手を伸ばし、影たちが口を開いた。
彼らの目は虚ろで、無表情だ。
その中の一人が、かすれた声で呟いた。

「私たちも同じ道を歩いた。罠にかかった。あなたも同じ道を行くのか?」

その言葉に真理は恐れおののいた。
信じられない思いで、その場から一歩でも後ずさろうとするが、影たちの手が彼女をさらに引き寄せる。

「私たちの代わりに……あなたがこの道を行かなければならない。」

叫び声を上げながら、真理はやっと足を動かした。
しかし、その瞬間、道の端に設置された石の模様が彼女の視線を引き寄せ、彼女が一度見たことのある霊的な光景が蘇った。
彼女の目の前には、数多の霊たちが彷徨い、助けを求めていた。

彼女はその場から全力で逃げるように走り出した。
しかし、彼女の後ろには、影たちがついてくる。
闇の中で彼女は、真実と罠の狭間に押し込まれ、永遠に逃れられない運命を感じた。

道が伸び続く中で、彼女は心の中に湧き上がる恐怖を抑え込もうとしたが、その顔が闇に消えていく姿は、彼女の頭から離れなかった。
誰も見ていない、誰も助けてくれない。
ただ、不気味な声が再び囁く。

「冒険はここで始まる……」

真理はその言葉が耳から離れることはなく、夜の道を今も彷徨い続けている。

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