「闇にひそむ怨霊の囁き」

リは、都会の喧騒を離れた静かな村に住んでいた。
ある日、友人から聞いた話を思い出し、興味をそそられた。
「村の外れにある窟には、長い間忘れ去られた怨霊が住んでいる」と噂されていた。
その窟を探しに行くことに決めたリの心は、好奇心に満ち溢れていた。

夜が深まり、月明かりが薄暗い森を照らし出す中、リは懐中電灯を片手に窟のある場所へと進んでいった。
進むにつれて、周囲の静寂が重くなり、リの心臓は高鳴り始める。
彼女の足元には、枯れ葉や小さな枝が雑に散らばり、その音が小ざっぱりとした夜の空気をさらに冷たく感じさせる。

ついに、遺跡のような形をした窟を見つけた。
岩に囲まれたその場は、まるで異世界に迷い込んだかのような不気味さを放っていた。
リは一瞬ためらったが、決意を固め、大きく息を吸い込んで中へと進んだ。
薄暗い空間の中、どこからともなく微かな声が響いているように感じた。

その声は「び…」と囁くように、リの耳に届く。
不安を抱きながらも、リは奥へと進んで行った。
壁には古い文字が刻まれており、それはかつてここで起きた悲劇を物語っているようだった。
彼女はしばらく進むと、窟の奥で小さな空間にたどり着いた。
その中央には石の像があり、周囲には無数の骨が散乱していた。

おそるおそる近づくと、石像の顔が不気味に歪んでいることに気がついた。
その瞬間、リの背筋に寒気が走った。
「終わらせる…」と小さく呟きながら、リは何かに導かれるように手を伸ばした。
すると、石像の目が突如として光りだし、リは驚いて後退りした。

「お前が来るのを待っていた」と声が響く。
その声は冷たく、どこか魅惑的だった。
リの心は恐怖に支配され、逃げたいと思うも、まるでその場から動けない何かに捕らわれているような感覚にとらわれた。
「成し遂げてみせろ…」声は続けた。

リは、失うものが何もないことに気がついた。
家族が、友人が、彼女の周りにいるものはすべて、彼女の意志とは無関係に進んでいく人生の中で、いつしか孤独を感じるようになったのだ。
「この場所で本当に成し遂げたかったことがあるんだ」と思った瞬間、ようやく意識が戻った。

彼女は手を石像の温もりに触れた。
その瞬間、自身の過去、苦しみ、そして孤独が一気に押し寄せる。
声はますます大きくなり、周囲の空気が重くなっていく。
リは「何も終わっていない」と叫んだ。
その言葉が波紋のように広がり、窟全体が震えだした。

そして、不意に周囲の骨が動き出し、不気味なうめき声が響き渡った。
リはその光景に息を呑む。

「ここにいる適者にお前の罪を捧げろ」と声がささやく。
リは我に返り、必死に窟から逃げ出そうとしたが、動くことができない自分を感じた。
「これが私の選択なのか」と深い絶望に襲われた。
最終的には、彼女は闇の中に引き込まれていった。
そのまま失われてしまったかのように。

数日後、村人たちはリの行方がわからなくなり、彼女のことを言い伝えに残すことにした。
「窟には、怨霊が住んでいる」と。
彼女の存在は、もはや村の記憶の中に埋もれたままとなり、知られざる恐ろしい神話として世代を超えて語り継がれるのであった。

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