ある日、山田健太は地元の友人たちと一緒に、何気ない会話の流れから「封印された場所」にまつわる怪談を持ち出すことになった。
彼の話によれば、その場所は村の外れに位置する古びた神社であり、「人が近づいてはいけない」とされていた。
神社には、かつて村を襲った大きな災厄を封じ込めたものがあるという噂があった。
「どうせただの伝説だろ?」と友人の一人が言った。
すると、別の友人が「それなら、行ってみようぜ」と提案した。
何かに挑戦することが好きな彼らは、その言葉に興奮し、数日後に神社へ向かうことに決めた。
神社に着いたのは、天が薄暗くなる夕方だった。
周囲は静まり返り、時折風が木々を揺らす音だけが響いていた。
健太たちは、懐中電灯の明かりを頼りに、神社の本殿へ足を運ぶ。
廃れた境内には、落ち葉や苔で覆われた石造りの鳥居が立っていた。
本殿の前に立つと、そこには見たこともないような古びた封印の扉があった。
表面はひび割れ、暗い色をしている。
友人たちは興味津々で、扉の周りを探り始めた。
中には何が封じ込められているのか、誰もわからない。
しかし、一つだけ知っていることがあった。
それは、「開けるな」という警告だった。
「開けてみようぜ」と言い出したのは、勇気を持った友人の一人だった。
しかし、他の友人たちはためらいを感じていた。
その瞬間、健太の中で何かが動く。
彼もまた、未知のものに惹かれる気持ちを抱いていた。
結局、友人たちの心を黙らせることはできず、扉を開けることになった。
健太は鍵穴を探り、ゆっくりと扉を押し開ける。
すると、赤い光が漏れ出し、背後の友人たちが驚きの声をあげた。
中には空間が広がり、目の前には何か暗いものがうごめいているのが見えた。
それは、かつてこの地に存在していた災厄の象徴であり、大地の怒りを具現化したものだった。
その瞬間、健太たちの心に恐怖が走った。
彼は「もう閉めよう」と言おうとしたが、その言葉は喉に詰まって出なかった。
次の瞬間、闇の何かが彼らの心に入り込み、恐怖に満ちたささやきが響く。
「お前たちが目覚めさせたのだ」と。
友人たちは次々と恐怖に引きずられ、助け合って逃げ出そうとした。
しかし、神社の周囲は異様な霧に包まれ、まるで逃げ場を奪われたかのようだった。
その後の記憶は曖昧だが、彼らは互いに手を引き合いながら必死に逃げ続けた。
健太は、何度も後ろを振り返っては恐ろしい影に怯えた。
その影は、まるで彼らの魂を求めるように迫ってきた。
ようやく、彼らは神社から離れることに成功したが、その後変わり果てた姿は影をまとったようになっていた。
日常生活に戻っても、彼らの心に重くのしかかるものがあった。
誰も言葉を交わさなかったが、胸の奥に広がる恐怖を抱え、それは日増しに増していくようだった。
数日後、健太は夢の中であの神社を見た。
赤い光と「お前たちが目覚めさせたのだ」という声。
目を覚ました彼は、汗びっしょりでこの夢の中で感じた恐怖を再び思い出していた。
ただの遊びのつもりで挑んだ神社。
しかし彼らは何かの「封印」を破ってしまったのだ。
その日から、健太は異常な冷気や重苦しい空気を感じるようになり、友人たちも次々と心のバランスを崩していった。
何かが彼らの中で「破られた」まま、日々の生活を蝕んでいた。