「閉じ込められた教室」

静まり返った学び舎の中で、先田は不気味な気配を感じていた。
彼はいつも、放課後に一人で図書室に篭るのが好きだった。
図書室の静けさは、彼の思考を深め、新しいアイデアがひらめく場所でもあった。
しかし、その日は異様な雰囲気に包まれていた。

図書室の窓の外は、すっかり暗くなり、外からの光はほとんど入らなかった。
先田は気分が悪くなり、借りた本を読み終わることもなく、机の上に置いたまま立ち上がった。
その瞬間、何かが背後で開く音がした。
彼は思わず振り返ったが、そこには誰もいない。
ただ、扉が少しだけ開いているのが見えた。

「こんな時間に誰かが来たのか?」彼は疑問に思いながら、恐る恐る扉の方へ近づいた。
扉の向こうは暗闇に包まれており、どうしても踏み出す勇気が出なかった。
しかし、彼の好奇心は勝ち、扉を引いてみた。

すると、背後から冷たい風が吹き抜け、彼の体が一瞬硬直した。
図書室の明かりが、まるで自分を拒むかのように揺らいでいる。
ついに、先田は意を決して扉の先へ進むことにした。

扉の向こうは廊下で、どこか異質な雰囲気が漂っていた。
そこは普段の学校とは全く異なる空間のようだった。
まるで、時間が止まっているかのような静けさが支配していた。
先田は、恐る恐る廊下を歩き始めた。
しかし、その瞬間、背後で「カラン」という音がして、振り返っても誰もいない。

「おかしいな…」先田は不安になりながらも、奥へと進んでいく。
すると、突然視界の端に、何かが「あの先に」と囁いてくるようなものを見た。
先田は迷いながらもその先に進んだ。

その先には、古びた教室があった。
ドアは開いていて、中から奇妙な声が聞こえてきた。
しかし、そこには誰もいない。
不気味な静けさが漂っていた。
その教室の中には、黒板があり、何かが書かれているのが見えた。
「あなたが壊される」とだけ、ただそれだけが明記されていた。

先田はその文字を見た瞬間、身の毛がよだつ感覚に襲われた。
自分が置かれた状況が理解できなかった。
焦燥感に駆られた彼は、後ろを振り返ろうとしたが、背後には何かが迫っている気配を感じていた。

先田は、教室から逃げようとしたが、ドアが閉まり、開かなくなってしまった。
中に閉じ込められてしまった彼は、必死にドアを叩いた。
しかし、誰も助けに来てはくれない。
周囲の空気が徐々に冷たくなり、かつての静けさがどんどん重くのしかかってきた。

そして、教室の奥から、誰かが笑っている声が聞こえてきた。
声が次第に大きくなり、まるで彼を嘲笑うかのように響き渡る。
先田は恐怖で逃げ場を探し始めたが、教室の壁が不気味に閉じ込めていく感覚を覚えた。

「助けて…」彼は小さな声で呟いた。
しかし、その声はほとんど聞こえず、廊下の暗闇の中、彼はただ一人で取り残されていった。
壁が近づき、何かが彼を取り囲むような感覚がしたが、その時、彼の目が覚めた。

先田は汗だくになり、慌てて立ち上がった。
夢だったのか、現実だったのか、分からなくなった。
その後、彼は教室を出ようとしたが、ドアが開かない。
「これは現実なのか?」先田は問いかけたが、答えは返ってこなかった。

外の世界はいつも通りの光景が広がっていたが、彼の心には恐怖がいつまでも消えずに残った。
「壊れてしまう、壊されてしまう」その言葉が頭の中で響いていた。
先田は、再び図書室には近づけなくなってしまった。
彼は、あの恐ろしい教室の存在を心底恐れ、忘れようとしたが、一度見たものは、決して忘れられるものではなかった。

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