閉ざされた夜の公園。
月明かりが薄く差し込む中、圭介は突然の雨に降られ、近くのトイレに避難した。
そこは、公園が閉まってからは誰も訪れない、薄暗く臭いがこもった場所だった。
水滴が天井に当たる音だけが響く中、彼は休憩しながら、自分のスマートフォンを取り出し、友達と電話をしていた。
「おい、大丈夫か?ここにいるとやばいって噂だろ?」友人の声が不安を煽る。
「そんなの、ただの都市伝説だろ。俺、ちょっと遅れて帰るからさ、気にすんな」と言い返す圭介。
しかし、彼の心の奥底では、かすかな怖さが芽生えていた。
その瞬間、トイレの電気が一瞬ちらついた。
圭介は驚いて周りを見回す。
何も変わった様子はない。
しかし、冷たい風がトイレの中に吹き抜け、彼の背筋を凍らせた。
彼は友人に「ちょっと切るわ」と告げ、電話を切り、静寂に包まれるトイレの中へと目を戻した。
壁にかかった鏡を見つめていると、突然、鏡の奥に影が映った。
まるで誰かが自分を見つめ返しているかのようだった。
圭介は心臓が高鳴り、温もりを失った。
不安を押し殺し、彼はトイレのドアを開けようとしたが、何かがそれを妨げているように感じた。
「何かの間違いだ」と声に出して自分に言い聞かせ、再び鏡を見る。
今度は、自分の顔が歪んで映し出された。
その瞬間、圭介の頭に悪寒が走った。
「いや、だめだ、ここから出よう」と心に決めた彼は、もう一度ドアを開けることを試みた。
だが、それは固く閉ざされたままだった。
不安が膨れ上がる中、圭介はその場から逃げ出そうとした。
しかし、その瞬間、トイレの隅からかすかな声が聞こえてきた。
「助けて……」それは、誰か、何かの叫びのように聞こえた。
圭介は恐怖で凍りついた。
動きたくても動けず、声がする方に振り向く。
そこには、地面に這いつくばる一人の女性がいた。
その目は虚ろで、恐怖に満ちている。
彼女の近くには、湿った衣服を身にまとい、まるで泥に埋まっているように見えた。
彼女が口を開くと、そこから溢れ出た言葉は「助けて……私を閉じ込めないで……」だった。
圭介は心の中の理性が崩れそうになるのを感じ、声を上げた。
「おい、どこから来たんだ!何があったんだ?」と問う。
しかし、彼女の目は彼を見つめたまま、すべての言葉が失われていく。
彼女の存在は徐々に影のように薄れていき、圭介の耳元で再び不気味な囁きが聞こえた。
「逃げられない……」それは彼の心の深い部分に響き、恐怖が圭介を包み込む。
彼は全身の力を振り絞り、再びドアを開けようとした。
しかし、その時、トイレの照明が一斉に消え、深い闇が彼を飲み込んでしまった。
彼は心臓が鼓動を打つ音だけを響かせながら、闇の中で動けなくなってしまった。
もう一度、あの女性の悲痛な声が耳に迫ってくる。
「閉じ込められた……私の中に入ってしまった……」彼の思考が混乱し、少しずつ悪に侵されていくのを感じた。
次の瞬間、圭介は完全にトイレに閉じ込められてしまった。
そして、その瞬間、再び彼は一人の影として消え、同じ運命を辿る者となるのだった。
自分の名前も、存在も全てが悪に食われ、彼は永遠にそのトイレの中で彷徨うことになった。
利用客がその後、声を聞くたびに、彼の悲哀が新たな扉を閉じる。