深い闇に包まれた町の外れ、朽ちた洋館が立っていた。
住人はもう何年も戻ってこないと言われ、今ではただの廃墟として誰からも忘れ去られていた。
しかし、時折その洋館の周りで奇妙な現象が起こることが噂され、好奇心を刺激する者たちを惹きつけていた。
ある夜、若い友人たち四人がその洋館に肝試しに訪れた。
彼らは高橋、田中、佐藤、藤井の四人で、楽しみ半分、不安半分で洋館の中に足を踏み入れた。
お互いに冗談を言い合いながら、中庭にあった枯れた木の下に集まった。
すると、ふと気がつくと、周りの雰囲気が不気味に変わっていった。
冷たい風が吹き、木々がざわめき出す。
まるで彼らを迎え入れるかのようだった。
「ここは昔、狂った博士が住んでいた場所らしい。彼は人間の魂を封じ込める実験をしていたって噂だよ」という高橋の言葉に、少し引きつった笑い声が響く。
だがそれだけではなかった。
田中が薄暗い廊下を進むと、突然何かが動く音を聞いた。
「誰かいるのか?」と声を上げるが、反応はない。
彼の背筋が凍る。
全員が揃うと、みんなで室内を探索することにした。
古い家具と埃にまみれた壁。
目の前には大きな鏡があり、その鏡には誰も映っていなかった。
ふと、藤井が「ここの鏡は特別だって聞いたことがある。昔の人を還してしまう力があるって」と言った。
彼の言葉が引き金となったかのように、静寂に包まれた部屋に不気味な気配が漂い出す。
次の瞬間、子供の笑い声が響き渡った。
周囲を見回すと、そこには見知らぬ子どもが立っていた。
彼女は薄い白いドレスを着ていて、顔色は土気色。
目はまるで無気力な人形のように虚ろだった。
佐藤が驚いて後ずさり、「何これ、本当に怖い」と言った。
だが、藤井はその子供に近づいて、「君は誰?」と恐れを抱えながらも尋ねた。
その子供は「私はここに還されたいの」と言う。
声は揺らぎ、絶望感が溢れていた。
「封じ込められたままでは駄目なの」と続ける。
高橋は恐怖から逃れるように、早くその場を離れようと決心した。
しかし、どこに行っても出口は見つからず、洋館の中を彷徨うばかりだった。
高橋は、「誰かが封じ込められたのかも知れない。それがこの子なのか」と心の中で叫んだ。
仲間を通じて奇怪な力が存在することを実感した。
彼らは恐れと興奮の間で揺れ動き、結局、屋敷の中央の広間に集まった。
倒れた古い書物を開いた時、気づいた。
そのページには、研究者が人を狂わせ、それを封じ込めるために鏡を使っていたという記録があった。
そして、深い研究の影には、彼らを狂わせるための儀式が隠されていることに気づく。
そこで高橋は言った。
「この場から逃げるためには、この子を還さないといけない!」
佐藤は反対した。
「でも、どうやって?私たちがどうにかなる問題じゃない!」。
途方に暮れながらも、藤井は鏡に触れてみた。
「返して欲しいって思いを込めて」。
風がうねり、子供の影が鏡に吸い込まれ始め、その空間が暗く渦を巻いた。
「いけない!戻っちゃう!」悲鳴が上がる中、瞬間、全員は意識を失った。
気づくと、全てが元通り。
洋館の位置も、子供の影も消え、何もなかったかのようだった。
だが、彼らの心には恐怖が刻まれた。
あの奇怪な夜のことを忘れることはできない。
彼らはそれぞれ異なる道を歩んでいったが、あの白いドレスの子どもの笑い声が耳に残り、そして時折夢に現れるようになった。
それは封印された思いが、いつかまた彼らを呼び寄せようとしているかのように。