「選ばれた暗闇の展示会」

ある不気味な展示会が開かれた。
会場は、薄暗い照明が燈り、都会の喧騒から隔絶された場所に佇んでいた。
展示物は人の手によって作られたものとは思えない、不気味な彫刻や絵画がずらりと並んでいた。
訪れる人々はその異様な雰囲気に引き寄せられ、何か不安を覚えながらも、興味津々で会場を巡っていた。

その中で少女のような姿をした一人の女性、名をなつきと言った。
彼女は美しい顔立ちに反し、どこか影を宿したような眼差しを持っていた。
なつきは、展示会の中でも特に惹きつけられる作品があると言って、ぐるりとその展示会場を一人、巡っていた。

突如、なつきの目に留まったのは、黒い布で覆われた一つの展示物だった。
周囲の人々はその作品にあまり近寄ろうとはしなかった。
彼女は勇気を出して布を引き剥がした。
すると、そこには真っ黒なスペクトルのような人影が描かれた絵画が現れた。
影が揺れ、まるで実体を持っているように思えた。
彼女は強烈な好奇心に駆られ、しばらくその絵に見入っていた。

しかし、その瞬間、耳元に微かな声が響き始めた。
「見てはならない、見てはならない、見てはならない…」と、繰り返される不安を掻き立てる言葉。
恐怖に駆られたなつきは、目を閉じて耳を塞ごうとしたが、声はますます大きくなり、心臓が高鳴っていくのを感じた。

周囲の人々は気付かずに彼女を見つめる。
彼らはなつきの表情が次第に変わっていくのを見て、何が起きているのか理解できなかった。
すると、なつきは意を決して目を開け、その絵から目を背けた。
声は急に止まるが、代わりに身の毛もよだつざわめきと共に、布の中から何かが這い出してくるのを感じた。

その瞬間、異様な冷気が会場を包み込んだ。
周囲の明かりが一瞬にして消え、真っ暗に覆われる。
人々は呼吸を乱し、恐怖に震えながら出口を探した。
しかし、なつきはその場に立ち尽くしていた。
彼女の心には、もう一つの存在が迫っている感覚があった。

「私と一緒に来て…」その声は甘く囁き、まるで彼女を抱き寄せるように感じた。
そして、振り返ったその瞬間、彼女は見た。
影がその存在を顕わにし、目が合った。
異様な笑みを浮かべたそれは、まるで彼女を「選んだ」というように感じられた。

周囲の人々は気づかぬまま、なつきを置いて逃げ去った。
彼女だけがその場に残され、闇の中で一人、静かに息を潜めるようにしていた。
やがて、周囲の人々が去った後、会場は静寂に包まれた。
なつきは身動きできずにいる。
彼女はその影とともに生きることを選ばされたのか、それとも選んだのか。
どちらにせよ、今や彼女は闇の中で消え去り、二度と呼び戻されることはなかった。

その展示会は後に忘れ去られ、誰も思い出さなくなったが、影の中で繋がれたなつきは、永遠にその絵の中に閉じ込められているのであった。
彼女の姿を見た者は二度とその場所には近寄らない。
都会の片隅で、キャッチされた少女の影がいつまでもそこに潜んでいるのを知る者はいない。

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