ある晩、東京のとある雑居ビルの一室で、乗田翔太は運を試すために友人たちと一緒に集まっていた。
彼らは最近流行っていた「気」の話題に興じており、異次元の存在や運命を操作する力について熱く語り合っていた。
面白がった翔太は、友人たちを招いて、「気」を感じるゲームを企画することにした。
「今夜、運試しをしよう。ここには、特別な気が漂っているって噂があるんだ。」翔太は、自分たちの集まる場所を選んだ理由を話すと、友人たちの間に興味が広がった。
彼は自分の持つ占いの道具を取り出し、周囲の雰囲気をどうにか利用してゲームを進めるつもりだった。
友人たちは笑いながら、運試しの内容を決めていった。
「この部屋に一晩中いることで、誰かの運が上がるのか、それとも逆に下がるのかを確かめよう!」という無邪気な提案からスタートしたのだが、実際にやってみると異様な緊張感が室内を覆った。
午前0時を過ぎた頃、翔太の持っていた占いの道具が突然、異常な反応を見せ始めた。
「おい、これ、マジで動いてるぞ!」と一人の友人が言った。
翔太も驚いた。
通常は静かな道具が、微弱な振動を伝え、まるで何かに反応を示しているようだった。
「気…なんかおかしいぞ、本当に感じる」と、翔太の心には違和感が広がった。
その時、窓の外から冷たい風が吹き込み、彼らの背筋を寒くした。
周囲が再び静まり返った時、翔太は自分の発言を後悔し始めていた。
「ひょっとして、ここには運を試された人の霊が漂っているのかな…」翔太が言うと、友人たちは不安の表情を浮かべた。
「やめろよ、そんなこと言うなよ…」一人が声を震わせた。
恐れが彼らの心を包み込んでいく。
すると、突然部屋の空気が変わった。
重く、うっとうしい雰囲気が漂い始め、誰もが感じる「気」が不気味な方向へと歪んでいった。
「おかしい、何かがいる…」翔太は心臓が早鐘のように打つのを感じた。
その時、ふと目に入ったのは一つの古い鏡。
鏡には彼らの背後に立つ黒い影が映っていた。
翔太は恐る恐る振り返ったが、そこには誰もいなかった。
彼は驚きで心を乱し、友人たちにこの異常な現象を伝えようとした。
だが、言葉を発する間もなく、影は鏡の中で不気味に微笑んでいた。
混乱が広がり、友人たちは次々と逃げ出し始めた。
しかし、翔太は動けずにその場に立ちすくんでしまった。
影は示すのだ。
「お前の運を試してやる」と、彼の意識に直接語りかけてきた。
「運が試されるのなら、散々遊んできた罰を受けることになるかもしれない…」翔太はその言葉に恐れ、逃げることもできない自身の運命を悟った。
彼は自らの選択がどれだけ散らばってしまったか、自分の求めた運の姿が今彼の目の前に現れていたのだ。
そんな中、影は翔太に告げる。
「運を試すとは、裏切りを伴うことだ。そこを理解せよ」と。
その言葉を聞いた瞬間、翔太の頭の中に様々な選択肢が揺らいだ。
友人たちにどう伝えるか、運命をどう解消するか。
だが、そのどれもが遥か遠いところに感じられた。
気は次第に重く、彼の思考を遮っていった。
翔太は、逃げられない運命の糸に絡め取られながら、永遠に続く夜が待っていた。
彼の運は、もう二度と戻ることはできないのだった。