ある街の片隅に、ポという名の不気味な場所が存在した。
その街は、日常の喧騒から遠く離れた静かなところで、人々はあまり近寄ることを好まなかった。
なぜなら、そのポには生きる者と死ぬ者を分ける不思議な現象が起こると噂されていたからだ。
この街に住む一人の若者、健一は、平凡な日常に退屈を感じていた。
彼は街に流れる噂を耳にし、好奇心からそのポを訪れる決意をした。
夜の闇に包まれた道を進むと、彼は光り輝く小道を発見する。
その光は温かみを帯びており、まるで彼を誘うかのようだった。
健一は心を躍らせて小道に足を踏み入れた。
小道の終わりには、古びた祠(ほこら)があった。
彩色が鮮やかだったが、何か異様な空気が漂っていた。
突然、健一の視界に入った一筋の光が、祠の周囲をぐるりと取り巻くように煌めき始めた。
それはまるで彼を見つめているかのようであり、奇妙な気持ちを抱かせた。
「これが運命の導きだろうか?」彼は無意識に呟いた。
しかし、その時、突如として何かが彼の心に触れた。
亡霊のように冷たい風が体を吹き抜け、背筋が凍る思いをした。
「これは呪いだ」と、彼の内なる声が囁いた。
強い恐怖が彼を襲ったが、同時にその光に惹かれる衝動が強まった。
恐ろしいものに魅せられているのではないかと、彼は自らを戒めながらも、さらに一歩近づいた。
祠の前に立つと、光はますます強くなり、次第にその中心からかすかな声が聞こえてきた。
まるで生者に語りかけるように、「あなたには選択がある」と。
恐怖心を抱きつつも、健一はその声に耳を傾けた。
「選択……?」
声は続けた。
「あなたがこの光の中に入れば、特別な才能を授けるが、同時にその代償として、あなたの運命は変わる。信じるか、否かはあなた次第だ。」
果たして、彼の心に迷いが生まれた。
大切な日常を捨て、暗い未来に進むべきか。
生きる価値のある選択は何なのか、彼は真剣に考えた。
しかし、その瞬間、またもや冷たい風が吹き、彼の心には別の感情が芽生えてきた。
「自分を試せば、何かが変わるかもしれない」と。
健一は一歩踏み出し、光に身を委ねることを決意した。
光が包み込み、次の瞬間、彼は祠の中に吸い込まれていった。
何も見えない空間の中で、彼は自らの未来を決める運命の選択を味わっていた。
しかし、目が覚めたとき、彼は街の真ん中に立っていた。
周囲は何も変わっていなかったが、彼の心には異様な活力が宿っていた。
ただ、周囲の人々が彼を見る目は、どこか冷ややかで、そして遠い過去を見るような視線だった。
健一はポでの出来事を思い出し、そして気付いた。
自らの道はまだ始まったばかりだ。
かつての平凡な生活は消え去り、代償として新たな「運」を手に入れたが、その影には誰かの命がかかっていることを感じた。
街には彼を知る者がいなくなり、その空気は一層重く、光は今も彼を見つめ続けていた。
そして彼は、再びポの道を歩もうと決意したのだった。
その運命の呪縛を解き放つために。