夜深い山の中に、一つの小さな村があった。
その村は古くからの伝説が語り継がれており、特に「運の灯火」と呼ばれる不思議な現象が人々の間で恐れられていた。
夜になると、村の山の中腹に小さな光が現れるという。
それは、運を持つ者には幸運を、持たない者には厄をもたらすと言われていた。
主人公の慎一は、村の若者だった。
何気ない日常を送っていたが、最近は運が悪く、何をやっても上手くいかないことが続いていた。
友人たちもその噂を聞き、「運の灯火」を見に行くことを勧めた。
「どうせ行くなら、運を良くするために行ってみたら?」そう言われた慎一は、興味本位でその山に向かうことにした。
友人たちと一緒に、慎一は夜の山道を進んだ。
月明かりが照らす中、彼らはしばらく歩き続け、やがて山の中腹にたどり着いた。
そこには、小さな木の灯籠があり、その周囲には懐かしい石碑が並んでいた。
灯籠の火は小さく、それでも不思議と暖かみを感じさせた。
「これが『運の灯火』か?」友人の健太が言った。
「確かに、なんとも神秘的だな。」
慎一はその言葉を耳にしながら、自分の運命が変わることを期待していた。
「灯火に触れれば、運が良くなるのだろうか?」慎一は思ったが、どうするべきか悩んでいた。
その時、突然風が吹き荒れ、灯籠の火がぱっと消えた。
辺りが真っ暗になり、慎一は思わず声を上げた。
「おい、どうした!?」
その瞬間、空気が重くなり、背後から低い声が聞こえた。
「運はめぐる、運は巡る……」その声は、まるで大地から発せられるものであり、慎一は恐怖を覚えた。
「行こう、ここにいるべきじゃない!」健太は表情を青ざめさせ、村の方へと戻ろうとした。
しかし、慎一はその場から動かずに立ち尽くした。
何かが彼を引き止めているような感覚があった。
「アレに触れることが出来れば、運が」と慎一は心の中で葛藤していた。
「でも、代償もあるかもしれない……」
そこで慎一は、ふと灯籠のそばにある石碑に目を向けた。
そこには、運を求める者に対する警告が刻まれていた。
「灯火に触れし者は、己の運命を受け入れよ。」その言葉には、運だけでなく、恐怖も同時に象徴しているようだった。
慎一は覚悟を決め、灯籠に手を伸ばした。
指先が火に触れる瞬間、強い眩しさが彼を包み込む。
視界が白くなり、彼の頭の中には過去の出来事がフラッシュバックされてきた。
彼はこれまでの人生での選択や後悔を思い出し、何かが癒されていく感覚を覚えた。
「これが運を取り戻すということなのか?」慎一は思ったが、その瞬間、強烈な痛みが彼の心を貫いた。
彼はその影響で何かを失い、その痛みを背負うことに。
目が覚めると、彼は山の中腹の灯籠の前に横たわっていた。
友人たちが心配そうに彼を見下ろしていた。
「慎一、大丈夫か?」
彼は立ち上がり、その瞬間、何かが彼の心の中で変わったことを感じた。
自分の運命を受け入れ、これからは過去を悔いるのではなく、前に進んでいくことを決意した。
しかし、その晩、村には一つの不幸が持ち込まれた。
慎一は運を取り戻したにもかかわらず、彼が灯籠に触れたことで、友人たちの運を奪ってしまったのだ。
彼は幸運を得たが、運は一つの者にのみ付き従うものではないことを悟った。
「運はめぐる」という言葉が彼の頭に響き続け、慎一はこの運命を背負い生きていくことを決めた。
そして、彼は灯籠の光が再び消えないよう、友人たちのために運を分け合うことを誓った。
それが果たして可能かどうかは、運命の神のみぞ知ることなのだった。