「運の代償」

夏のある日、友人たちと共に公園でバーベキューを楽しむことに決めた。
場所は、昔から地元の人々に親しまれている広い園で、緑豊かな木々や小さな池がある、穏やかな空間だった。
そこには、特に気になる噂があった。
「この園には、運をもたらす存在がいる」というものだ。
誰もが一度は耳にしたことのある伝説だったが、そんなものはただの冗談だと思っていた。

その日、私たちは楽しく食事をしていたが、突然の雨が降り出し、近くの大きな木の下に避難することにした。
雨が激しくなる中、不意にまるで目が合ったかのように感じた。
ただの木の枝なのに、どこか妙に気になる存在だった。

「左側の大きな枝のところ、何かいる?」と友人の一人が言った。
みんながその方向を向くと、確かにそこには何かの気配があった。
しかし、よく見てもただの影のようにしか見えなかった。
私たちは話題をそらし、笑い合ったが、その後も不思議な静けさが漂った。

雨が止み、私たちは再びバーベキューを始めることにした。
その日の夕方、ふと友人の佐藤が「運をもたらす存在に会えた気がする」と言い始めた。
正直、その発言がどういう意味か、私には理解できなかった。
しかし、何か良いことが起こるのではないかと思うと、心がそわそわした。

次の日、佐藤は宝くじを買ったと言い、なんと高額当選を果たした。
その話を聞いた瞬間に、まるで不思議な運を引き寄せたかのように思えた。
しかし、それが本当の運なのか、ただの偶然なのか、友人たちの間で話は広まり、ますます園での伝説が盛り上がっていった。

その後、友人たちも次々に運が良くなり、何か特別な運がこの園に宿っているという噂が広がった。
それが村全体に伝わり、人々は、この園に訪れなければならないとの考えを抱くようになった。

しかし、次第にそういった運が悪くなっていくこともあった。
周りの友人が借金を抱えたり、恋人に振られたりすることもちらほらとあった。
恐ろしいのは、運が良くなった人々に限って不幸が降りかかるケースが多かったことだ。
それでも誰もが、運をもたらす存在に期待して、園を訪れることをやめなかった。

そんなある日、私たちは再びその園を訪れた。
友人の中の一人、田中が「もう運なんか信用できない。この園のせいで、俺は何もかも失った」と言い捨てた。
言葉を聞いていると、胸の奥に恐れが広がっていった。
運は本当にこの場所から来ているのだろうか。
そして、運を引き寄せるためには何を犠牲にしなければならないのか。

私たちがその日の夕暮れ時に帰ろうとした時、今まで見たこともないほどの静けさに包まれた。
ふと見ると、あの大きな木の下で、木の根元に小さな石碑のようなものが置かれているのに気づいた。
恐る恐る近づくと、そこには「運を求める者は、必ず代償を払う」と書かれていた。
友人たちもそれを読み、ぞっとした。

そうして私たちはその場を離れ、自分たちが集めた運の影響を考え続けた。
運を求めたことで、私たち『不幸』に遭遇するリスクが生まれるということを誰もが覚悟していた。
果たして、それが真実なのか、ただの恐れなのかはわからなかった。
だけど、運に敏感になった私たちの心は、次第にその伝説の重みを感じ始めた。

結局、私たちはその園から足を洗い、もう二度と戻ることはなかった。
ただ今となっては、友人たちの運ですが、かつての楽しい思い出たちが、まるで私たちから逃げていくようだったのだ。
運が消え去ったその日、私たちは運よりも大切なものを思い知らされることになった。

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