深夜、静まり返った町の片隅にある古い家。
この家は、かつて賑やかな家族が住んでいたが、今は誰もいなくなった。
外壁は朽ち果て、庭には雑草が生い茂り、感覚的には時間が止まったかのような場所だった。
この家には、伝わる怖い話が存在する。
主人公の佐藤健太は、友人の誘いでその家を訪れた。
彼は都市伝説に興味を持ち、怖い話を収集していた。
しかし、タブーを犯すことの恐怖を感じながらも、好奇心が勝り、友人たちと共に闇夜の中へと足を踏み入れた。
過去にこの家に住んでいたのは、若い夫婦とその子供だった。
しかし、ある晩、原因不明の事故で家族全員が命を落としたという。
以来、家は誰も住まなくなり、夜になると子供の泣き声が聞こえるという噂が立っていた。
健太はそれを確かめに行くことにしたのだ。
彼らは懐中電灯を持ち、ザラザラした廊下を進んだ。
寒気が走り、まるで誰かに見られているような感覚を覚えた。
「何かいる…」友人の一人が小声でつぶやく。
健太は勇気を鼓舞し、「大丈夫だよ。噂話にしか過ぎないんだから」と言った。
彼は家族の悲劇を理解しつつも、その真相を探りたかった。
廊下の奥にある部屋のドアが微かに開いていた。
そこから子供の声がかすかに聞こえてくる。
「遊びたい…遊びたいよ…」その声に引き寄せられるように、健太たちはドアを開けた。
中は薄暗く、徐々に目が慣れてくると、そこには積み重ねられたおもちゃが転がっていた。
急に、彼らの耳に冷たい風が吹き抜け、ドアが勝手に閉まった。
友人たちは驚いてパニックに陥った。
「どうする?逃げよう!」と喚く声が響く。
だが、健太はその場に留まったままだった。
視線をおもちゃに向けると、少しずつ彼の中に不思議な感覚が芽生え始めた。
そこに、まるで過去の記憶が蘇るように感じたのだ。
その瞬間、彼の背後から冷たい手が伸び、肩を叩かれた。
「遊びたい…」その声は先ほど聞いた子供の声と同じだった。
健太は振り返ると、そこには薄暗がりの中から浮かび上がる子供の姿があった。
白い衣服を着た男の子、その目は悲しそうに潤んでいた。
周りの友人たちは恐怖で硬直し、声を失っていた。
「一緒に遊んでほしいの…」その言葉が健太の心に強く響いた。
子供の姿は、この家の過去を象徴しているようだった。
彼は思わず、「じゃあ、どうやって遊ぶの?」と答えた。
その瞬間、子供の表情が和らぎ、笑顔を見せた。
すると、暗い部屋の中に突然、色とりどりのおもちゃが浮かび上がり、まるで健太たちを歓迎しているかのように見えた。
しかし、その光景の裏には、何か不気味なものが潜んでいる気がした。
友人たちは恐れを抱き、逃げようとした瞬間、部屋の空気が一変した。
「遊びたいの…遊んで…」子供はだんだんと声を大にし、部屋の中が激しい光で満たされた。
健太は何かに引き寄せられ、自らその子供のもとに近づいていた。
「ごめんなさい、私は遊ぶことができない…」そう言ったと同時に、彼の足元が崩れ始め、まるで地面が崩れ去るように底が抜けた。
健太の声が響き渡り、周囲の友人たちは驚いて彼を助けようとして手を伸ばす。
しかし、彼はそのまま暗闇に飲み込まれ、姿を消してしまった。
暗がりの中から、子供の声だけが響き渡る。
「遊びたい…遊びたい…」
友人たちは恐怖に駆られ、その場から逃げ出すしかなかった。
そして二度とこの家に戻ることはなかった。
数年後、彼らはこの出来事を語り継ぎ、町の人々はその家を避けるようになった。
今もなお、家の中には遊びたい子供の声がこだまし、誰にも気づかれることなく、離れた存在として待っているのかもしれない。