静かな夜、月の光が優しく差し込む古い園。
そこは地元の人々にとって、今では忘れ去られた存在だった。
しかし、少数の好奇心旺盛な若者たちによって、再びその名が語られることになった。
特に、近所に住む中村は、その神秘的な雰囲気に惹かれ、何度かその園を訪れていた。
ある晩、中村は友人の佐藤と一緒に、園の奥深くに入り込むことにした。
彼らは、古くからの伝説に耳を傾けながら、そこで何か不思議な現象が起こることを期待していた。
中村は、そこに伝わる「逃げられない印」について聞いたことがあった。
その印は、園の中心にある大きな樹に刻まれていると噂されていた。
「本当にそんな印があるのか?」と佐藤が半信半疑で問いかける。
その言葉に中村は頷いた。
「見つけてやろうよ。もし、本当に見つけたら、何かが起こるかもしれない。」友人たちの興奮が高まり、彼らは心を躍らせながら進んでいった。
園の中心へ進むにつれて、次第に周りは静まり返り、不気味な雰囲気が漂い始めた。
背後からは何か囁くような風の音が聞こえ、月明かりが陰影を作り出している。
その時、中村の目に留まったのは、巨大な樹の幹に刻まれた不気味な印だった。
「これがあの印だ!」と中村は興奮を隠せず叫んだ。
しかし、その瞬間、何かが彼の心に引っかかった。
印を見た途端、彼の背後から急に冷たい息を感じたのだ。
振り返ると、暗闇の中にぼんやりとした影が立っている。
中村の心臓は早鐘のように鳴り始め、「逃げろ!」と叫ぶ。
佐藤と共に園をまた走り出すが、なぜか道が分からなくなっていた。
いつの間にか、彼らは元いた場所を失い、迷子になっていた。
「おかしい…あの印のせいだ!」佐藤が不安の色を浮かべながら言う。
すると、その瞬間、樹の印からかすかな光が放たれ、地面に何かが形作られているのが見えた。
何かが近づいてくる。
中村が恐怖で硬直していると、佐藤が声を上げる。
「印だ!逃げるためにはその印を超えなければならない!」彼らは必死に走り、印の近くまでに達した。
しかし、何かが彼らの行く手を阻むように立ちはだかった。
影は、シルエットを変え、まるで彼らの弱点を探るように動いていた。
「逃げられない印…」中村の頭にその言葉が焼き付いた。
逃れるためには、この印を克服しなければならないと直感的に理解した。
「どうにかしないと…」彼は言った。
佐藤も頷き、強い決意を持って辺りを見回す。
そしてふと思いつく。
「一緒に祈ろう!」二人は手を取り合い、心からこの園の悪しきものから解放されるようにと祈念した。
その瞬間、印から放たれた光が周囲を包み込む。
暗闇の影は、まるでそれに怯えるかのように後退し、徐々に消えていくのが分かった。
光が闇を吹き飛ばす中、中村たちは逃げ出すチャンスを得た。
二人は全力で園を駆け抜ける。
後ろから迫る冷たい影を振り切り、ようやく園の外に出ることができた。
息を切らしながら振り返ると、園の中はまるで元の静けさを取り戻したように感じた。
彼らは心臓の鼓動が静まるまでしばらくその場で立ち尽くし、あの印の恐怖が心に刻まれるのを感じた。
二人は「もう二度と行くまい」と心に誓うことになった。
夜空を仰ぎ、彼らは不思議な園の名を再び口にすることはなかったが、あの印のことを決して忘れることはなかった。