「迷宮に消えた宴」

深い霧に包まれた洋館、その古ぼけた家は長い間、誰も住んでいないまま放置されていた。
村の人々は、この洋館にまつわる恐ろしい噂を耳にしていた。
特に「気」という存在が、この家の地下に迷い込んだ人々を永遠に捕らえてしまうという話は有名だった。

ある日、大学の仲間たちと肝試しをすることになった佐藤とその友人たちは、肝試しの目的地としてその洋館を選んだ。
夜になると、月は細く輝き、霧はますます濃くなっていく。
彼らは不気味な気配を感じながらも、好奇心に駆られ、洋館の扉を開けた。

「ここが噂の場所か……」佐藤は小声で呟きながら、恐る恐る中に足を踏み入れた。
エントランスは薄暗く、埃をかぶった家具が並び、どこか古びた雰囲気を醸し出している。
彼の友人、美咲が目を丸くして、「これ、ちょっと気持ち悪いね……」と言った。

皆は緊張する心を抱えながらも、探検を始めた。
洋館の中を歩き回ると、ところどころに古い絵画や、手入れの行き届いていない庭の様子が彼らを見守っていた。
友人の一人、健二が「地下室に行ってみようぜ!」と提案した。
佐藤は迷ったが、好奇心が勝り、皆を引き連れて地下へ向かうことにした。

地下に続く階段は、長い年月の間に朽ち果て、所々足元が崩れていた。
恐る恐る一歩ずつ進む佐藤たちの心には、嫌な予感が広がっていく。
「気」の存在が本当にいるのか、まるで彼らの周囲の空気が重くなるように感じた。

地下室に到着すると、薄暗い空間の中に無造作に置かれた古い家具や、木製の箱が目に入った。
その中には忘れ去られた日記や、古い手紙が散乱していた。
佐藤が一冊の書物を開いた瞬間、果てしない迷いの感覚に襲われた。

その瞬間、周囲の空気が急に変わった。
まるで誰かが見ているかのようで、背筋が凍る感覚が彼を襲った。
友人たちは次第に動揺し、無言のまま視線を交わした。
「この場所から早く出よう!」健二が声を上げ、急いで出口へ向かおうとしたが、急に目の前が真っ暗になった。

「ここは……?」場の雰囲気は変わり、周りがまるで一つの迷路のように変わっていった。
どこを歩いても出口が見つからず、地下室の道は無限に続いているかのようだった。
佐藤は意を決して「地下には何かいるんだ!」と訴えたが、気味の悪い沈黙が支配していた。

どうにかして出口を探しつつ、皆は恐ろしい「気」を感じ取っていた。
美咲の顔色が青ざめていくのを見た佐藤は、ますます不安になった。
「ここから出なければ、滅んでしまう!」彼は必死になって、冷静を装いながら、仲間を励ました。

しかし、周囲が徐々に閉ざされていく中で、彼らは最終的にパニックになった。
「このままじゃ、皆、下に沈んじまう!」健二の叫び声が響くが、その声が虚しく響き返すだけだった。
皆はそれぞれの方向へと逃げ出すが、壁が立ちふさがり、どんなに移動しても迷宮から抜け出すことができなかった。

誰かが、地下の壁に刻まれた文字を見つけた。
「ここは決して戻れぬ場所」と。
絶望した仲間たちの中で、次第に一人、また一人と姿を消していった。
佐藤も消え行く友人たちの姿を見送るしかできなかった。

最終的に、佐藤は一人だけ残され、過去の仲間の声が遠くから呼びかけるのを聞いた。
自分は終わる運命を受け入れ、洋館の地下で迷い込んでしまった「気」に捉えられ、永遠にこの場所に留まる運命だった。
彼の心には、恐怖と後悔が巻き起こるばかりだった。

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