「迷いの神木」

小さな村のはずれに位置する古びた神社。
その神社には「飛鳥」という少女が住んでいた。
飛鳥は幼いころから、都会へと出かけることを夢見ていたが、村の封鎖されたような空間に心を惑わされ、いつも一歩を踏み出せずにいた。
村人たちからは「迷いの少女」と呼ばれ、奇異な目で見られることも多かった。

ある晩、飛鳥は神社の境内で祭りの準備を手伝っていた。
いつも通りの静けさを保つ村だが、この夜だけは特別な雰囲気が漂っていた。
祭りが近づくにつれ、村は何かの存在に包まれているように感じた。
その存在は明らかに普通ではない気配を持っていた。

祭りの初日、飛鳥は神社の奥にある古い神木の前に立った。
周囲の村人たちが賑わう中、彼女は一人、その木に目を向けた。
すると、木の根元からほのかに光るものを見つけた。
それは、まるで何かを呼び寄せるかのような不思議な光だった。
気になった彼女は、思わずその光に手を伸ばした。

その瞬間、彼女の心にじわじわとした感覚が広がり、その周囲に浮かぶ奇妙な模様が目に飛び込んできた。
光は彼女の身体を包み込み、何かが彼女を引き寄せていく。
彼女は恐怖と好奇心が交錯する中、光の中に踏み出してしまった。

その瞬間、周囲が静まり返り、飛鳥は異次元のような空間へと迷い込んでしまった。
見知らぬ土地、まるで幻想的な夢の中にいるかのような景色が広がっていた。
数分も経たないうちに、彼女は再び神社の境内に戻されたが、自分の周りに何もかもが変わっていることに気づいた。

村人たちは何事もなかったかのように祭りの準備を続けていた。
しかし、飛鳥には何かが欠けているような感覚があった。
次第に、彼女は少しずつ人々の会話から、「先代の犠牲になった少女」や「神社の迷い木」についての噂を耳にするようになった。
それは、神社の奥にある木のせいで迷い込んでしまった者たちのことを語っていた。
そして、彼女があの光に触れたことが、何かの運命と結びついてしまったのではないか、と疑念が心に広がった。

次の晩、気になりながらも、飛鳥は再び神木の前に立った。
彼女の中の好奇心と恐怖が渦巻き、再びあの光に触れてみたいという欲望に駆られていく。
迷い続ける心の中で、彼女は何かを求めている自分を感じていた。
しかし、もしも再び迷い込むことになったら、その先はどうなるのか。
自分自身を見失ってしまうのではないかという恐怖も確実にあった。

しかし、無邪気な思い出や微かな希望が彼女を動かした。
あの光はもしかしたら、彼女が直面しなければならない一つの試練のような気もした。
迷ってしまった先代の少女たちは、自らの過去と向き合うことで初めて解放され、再生する道を歩んでいったのかもしれない。

彼女はその思いを胸に抱きしめ、もう一度、神木の前に立った。
今回はただの好奇心ではなく、自分自身を試すために。
明確な目的を持った彼女は、その光に手を伸ばすことを決意した。

すると再び、光が彼女の周囲を包み込み、次の瞬間、飛鳥はあの迷いの空間へと飛び込んでいた。
彼女の心には覚悟が芽生えている。
過去の自分を受け入れ、迷いを乗り越えて未来へ進むための道を見つけること。
彼女はその瞬間、迷いを断ち切り、自らの道を確立するための一歩を踏み出したのだった。

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