「迷いの森と愛の印」

佐藤遥は、友人たちと一緒に山の中でキャンプをすることになった。
周囲は深い森に囲まれており、夕暮れ時になると、空が薄暗くなり、静けさが漂った。
彼女は、明るいテントの中で過ごすと同時に、少し先にある迷いの森についての噂を耳にしていた。
それは、迷い込んだ者が出てこられなくなるという、恐ろしい場所だ。

彼女の心に小さな不安が芽生えたが、友人たちと一緒に過ごす楽しさがそれを上回っていた。
夜が更け、たき火の火が消えかけると、遥は友人たちとともに、一つの怪談を語り始めた。
それは、迷いの森で起こった出来事を語るもので、夜の静寂が一層不気味に感じられた。

彼女たちが語るうちに、遥は不意に手のひらに冷たい感触を感じた。
目を向けると、そこには古びた印の彫られた小石があった。
「ねえ、これどう思う?」彼女はその石を取り上げ、友人たちに見せた。
すると、友人の一人である悠太が「それ、迷いの森に関係しているかもしれない」と言った。

興味をそそられた遥は、悠太と一緒にその日中に迷いの森へ行くことに決めた。
友人たちは心配したが、彼女たちの好奇心は勝ってしまった。
「早く戻ってくるよ」と言い残して、二人は森へと足を踏み入れた。

森の中は厚い木々に囲まれ、視界が限られていた。
少し歩くと、背後から耳障りな音が聞こえてくる。
遥は心臓が高鳴り、恐怖が少しずつ広がっていくのを感じた。
悠太も緊張した様子で「あれ、何だろう?」と呟いた。
しかし、彼らは答えを探すためにさらに進むことにした。

しばらく歩いた後、突然、彼らは不気味な光景を目にした。
それは、無数の小道が交差している迷路のような場所だった。
「ここが迷いの森なのか……?」遥はおぼろげな印象を抱き、背筋が寒くなった。
悠太は「戻ろう」と言ったが、すでに道に迷っていた。

道を探して進み続けるが、次第に森の静寂は彼らを包み込み、時間が経つにつれて日が暮れ始めた。
彼らは一度も見たことのない景色に出くわし、迷ってしまったことに恐怖を抱いた。
悠太は不安を隠せず「さっきの印、あれが何か関係しているのかもしれない」と言った。

その時、遥は何か視界の隅に動くものを感じた。
振り向くと、薄暗がりの中に、かすかな人影が見え隠れしていた。
「あれは……誰かいるの?」彼女は震えながら言った。
悠太は目を凝らして「行こう、あそこの方向に行ってみよう」と声を絞り出した。

人影に近づくと、それはかつての親友、田中美咲だった。
だが彼女の目は虚ろで、どこか異質な雰囲気を醸し出していた。
「美咲、何があったの?」遥は声をかけるが、美咲はただ黙って彼女を見つめるだけだった。

その瞬間、遥は不安が胸を締め付けるのを感じた。
美咲は一瞬、遥の手に触れると、彼女の心に愛が蘇った。
それは、自分を助けてくれるのだと思った。
しかし、その瞬間、悠太の声が響いた。
「遥、後ろだ!」

振り返ると、幽霊たちが現れ、二人を取り囲んでいた。
遥は恐怖に駆られ、体が動かなくなった。
「あなたは迷ってはいけない、ここから出られない」と、美咲の声が耳に響いた。
彼女は何かから逃れるために遥を呼び寄せていたのだ。

「愛された気持ちを忘れないで!」美咲は叫び、幽霊たちが遥を掴もうとする。
彼女は必死に手を伸ばし、悠太の方へ戻ろうと試みる。
しかし、何もかもが逆回しに進んでいく。
遥の心の中には、彼女の大切な愛が刻まれていた。

「私は忘れない、絶対に戻る!」心の中で叫び、彼女はその印を積み重ねていく。
愛の印が彼女を引き寄せ、迷いの森を照らしていった。

すると、光があふれ、森の出口へと導いてくれるかのように静まった。
彼女は悠太とともに、道を見つけ出すことができた。
その瞬間、自分たちの背後で、美咲の声が弱く響いた。
「戻って、愛はいつでもあなたを待っている」と。

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