夜が深まる北海道のとある町。
今村明は、仲間たちと肝試しに出かけることにした。
目的地は、町に伝わる「封印された足の神殿」と呼ばれる古びた廃屋だ。
噂によれば、その場所には何か呪われたものが眠っているという。
特に、足にまつわる奇妙な現象が起こると語り継がれていた。
仲間の桜井と中村と共に、勇気を振り絞り明は廃屋の前に立つ。
木が横倒しになり、苔が生えた壁は薄暗い夜に溶け込み、不気味な存在感を放っていた。
「行こう、早く終わらせよう」と、桜井が先に進む。
明は心の中で不安を抱きながらも、彼らの後を追った。
中に入ると、道は狭く、天井は低い。
薄暗い空気に身を包まれ、冷気が背筋を這う。
懐中電灯の光がちらちらと揺れ、石の床には不気味な模様が刻まれていた。
明はその模様をじっと見つめたが、何かを思い出そうとしている自分に気づく。
「この模様、見たことあるな……」明の思考が巡っていると、突然、中村が叫んだ。
「ああ、足! 誰かがここにいる!」その声は恐怖に満ちていた。
廃屋の奥から、確かに何かが足音を立てて近づいてくる。
「もう少し奥まで行こう」と明は言った。
自分に勇気を与えながら、彼は進んで行った。
奥へと入るにつれて、耳鳴りが増し、心臓が早鐘を打つ。
明の周りは暗闇に包まれ、仲間たちの顔も次第に見えなくなっていった。
その時、またも中村の声が聞こえた。
「足が、足が見える! 何が何でも逃げよう!」彼の叫び声に慌てて振り返る。
目の前にいた仲間たちの表情は一変しており、恐怖で歪んでいた。
何が起こっているのか、明には理解できなかった。
急に廃屋が揺れ、壁の亀裂から冷たい風が吹き込んだ。
暗闇の中に、何かが忍び寄る音が聞こえた。
それは、まるで引きずるような、異様な足音だった。
明は酔いしれたようにその音に引き寄せられ、動けないまま立ち尽くしていた。
ついにその姿が現れた。
暗闇から浮かび上がったのは、露出した足だけだった。
まるで生きているかのように、足は生々しく動き回っていた。
明は恐怖に戦くが、足は彼に向かって伸びてくるようだった。
「離れて!」と、彼は叫ぶ。
その瞬間、仲間たちが光を求めて近くの窓に向かう。
しかし、その足が彼らの行く手を阻んだ。
「私たちを離して! 辛い苦しみから解放させてくれ!」明は絶望的な声を上げたが、足は動き続け、彼らを特定の場所に縛り付けるかのように迫ってきた。
明は目を背け、逃げようにも逃げられなかった。
仲間の声が聞こえ、自らの意志と葛藤する中、隔てられた不気味な運命に捕らわれてしまった。
突然、彼らの視界がぼやけていった。
家の中の空気が変わり、重苦しさが深まる。
響く声は「お前たちの足を求めている」と囁いていた。
明はそれを制止し、遠く彼らの心の中に響く音を聴こうとした。
足の神殿は、ただ「離」を求めていたのかもしれない。
しかし、現実は残酷で、逃げる術を持たなかった。
仲間たちは明から離れていく。
明自身も、何かから逃げることができずにいる。
何度も声を上げ、助けを求もうとするが、言葉は届かず、ただ空しく響くばかり。
その時、明は決意を固めた。
「私たちは、たとえこの足を封じても、決して離れない!」彼は仲間と手を取り合い、一丸となって迫る足の神殿に立ち向かった。
彼らは恐怖を振り払い、共に光を求めるために踏み出したのだ。
明は知っていた。
古い神殿から離れるためには、彼自身がこの足の呪縛を解くことが必要だと。
仲間たちと共に踏み出す一歩が、やがて運命を動かす鍵となる、そう信じて。