「赤き炎の歌声」

夕暮れの静まり返った町、知る人ぞ知る廃墟となった古い学校があった。
その学校には、火のように赤い髪の少女、あかりが住み着いていた。
あかりは、かつてこの学校に通っていた生徒たちが大切にしていた場所に、無邪気に遊ぶ子供たちと共にいたことから、彼らの思い出を残そうとしているかのようだった。

ある日、町の兄弟、ゆうととまいは、仲良しの友人たちとともに、友人のあかりが話す不思議な学校に行くことに決めた。
彼らが学校に近づくにつれ、空気がひんやりと変わり、普段の元気な雰囲気が薄れていった。
「あかり、本当にいるのかな?」とまいが不安そうに呟いた。

「大丈夫だよ、あかりは優しい子だから、私たちを迎えてくれるよ」とゆうとは笑顔で友達を安心させた。
やがて、彼らは学校の廃墟にたどり着き、錆びた校門をくぐった。
風が吹き抜け、どこからかかすかに火の香りが漂ってきた。

校舎の中は時間が止まったかのように静まり返っていた。
友人たちはそれぞれ、当時の思い出を語りながら、かつての教室を見渡した。
暗い廊下を進むと、まるで何かに導かれるように、あかりの声が響いてきた。
「遊びに来てくれたの?遠くからでも、私は待っていたよ。」

彼らはその声に引き寄せられるように、校庭へと足を運んだ。
すると、そこには紺碧の空の下、やけに明るい炎が燃え上がっていた。
まるで、遠い過去の思い出を呼び覚ますかのような、暖かい火だった。
しかし、なぜかその火の周りには誰もいなかった。

「これは…あかりが待っている印では?」と、仲間のかなが興奮気味に言った。
しかしゆうとはその様子に少し不安を感じていた。
「ちょっと待って、火は危ないかもしれない。近づかない方がいい。」

だが、まいは好奇心に駆られて炎に近づいていった。
その瞬間、彼女の目の前にあかりの姿が現れた。
「私を助けてくれたの?この火を消してほしいの。私を解放してほしいの!」

まいは痛みを伴う呼びかけに心を痛めた。
あかりの瞳は虚ろで、炎に映る彼女の姿はまるで過去の影のようだった。
「あかり、何があったんだ?」まいが尋ねると、あかりは悲しそうに笑う。
「私は火の中にいるの。この学校が燃えた日の代償なの。私を解放して、仲間たちを救って…」

友人たちが恐れに震える中、ゆうとは火の勢いを見て「離れて!」と叫んだ。
彼らは駆け出したが、まいだけがその場に留まった。
火の中にあかりを見た彼女は、自分の手を火の中に差し出すことで、あかりを助けようとした。

「お願い、私を助けて…」あかりの声が響く。
炎は彼女の身体を包み込み、まいの心に恐怖が走った。
「待って、まい!」と仲間たちが叫ぶが、彼女はその場から動けなかった。

次の瞬間、火が激しく燃え上がり、まいは暗闇に引きずり込まれた。
彼女の目の前には、あかりの笑顔が浮かんでいる。
「ありがとう、私を呼び寄せてくれて…」

時が経ち、ゆうとたちはあかりの声が聞こえなくなったことに気づいた。
不安にかられる彼らは、校庭を振り返った。
そこには、静まり返った学校と、もう一つの火の気配が感じられた。
彼らは何も音を立てず、ただその場から逃げるように帰路についた。

その後、夜な夜な廃墟へと向かう影が、燃える火を求めて遠くからやってくるという噂が立った。
かつての思い出を求めて、仲間たちを助けるために、あかりは今も見えない炎の中で待ち続けているのだ。

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