閉ざされた町の一角には、「閉」という名の不気味な神社があった。
その神社は古くから「赤の神」と呼ばれる存在にまつわる伝説があり、誰もがその神に近寄ることを恐れていた。
神社の周囲には、深い赤色の小さな石が不気味に埋まっており、何かが在ることを示唆していた。
久しぶりに町に戻った清は、久々の同窓会のために古い友達と集まっていた。
しかし、彼女の心の奥には、忘れられない過去の記憶があった。
中学時代、友人たちとともに神社を訪れたことがある。
その時、彼女たちは「赤の神」にささやかれたのだ。
希望に満ち溢れた彼女たちに向けて「再び私の前に現れよ」としっかりと言った、その声は今でも耳に残っていた。
同窓会が終わり、どうしてもその神社のことが気になった清は、思い切って神社を訪れることにした。
夜の闇に包まれた神社は、いつも以上に恐ろしい雰囲気を漂わせていた。
鬱蒼とした木々が不気味なシルエットを描き、静寂を切り裂くように風が吹いた。
恐怖を感じつつも、清は神社の中に足を踏み入れる。
中に入ると、石の上には赤い色をした何かが染み込んでいるように見えた。
それはかつて友人たちが置いていったものだという噂もあった。
清はそれを見つめ、逃れられない思いに絡め取られていた。
「あの時の私たちの願いは、果たされなかったのかもしれない」と思った瞬間、深い沈黙の中で、彼女はかすかな声を聞いた。
「再び…私の前に…」それはどこからともなく響き渡ってきた。
清は思わず震え上がりながらも、その声が懐かしく思えた。
彼女はその声の主が何者であるか知っていた。
かつて自分たちが封じ込めた「悪」の存在。
「赤の神」だった。
清は思わずその場に立ちすくんだ。
恐怖と好奇心が交錯し、全身が冷たくなった。
神社の奥からは赤い光が漏れており、その光はまるで人を誘うかのように優しく波打っていた。
「来て、私のところへ」とその声が響く。
清はゆっくりと歩みを進めた。
神社の奥に進むにつれて、赤い光の強さが増し、周囲は明るく照らされていった。
暗闇の中から徐々に浮かび上がるのは、彼女の昔の友人たちの顔だった。
その姿は、まるで幻のように浮かび上がり、笑顔を向けていた。
「どうして私たちを忘れたの?私たちはあなたとずっと一緒にいたいって言ったじゃない!」彼女たちの声が重なり合う。
しかしそれは、清に対する責任を問うもので、彼女たちの表情にはどこか狂気じみたものも感じられた。
その瞬間、清は理解した。
友人たちはこの神社で封じられ、赤の神に取り込まれた存在だった。
彼女自身もその運命を逆転させるための「業」を背負わされていた。
再び神社に戻ったのは、自分の意志であったと同時に、彼女の内に秘めた悪に囚われていたのだ。
「あなたは彼らを解放することができる」と赤の声が彼女の耳元で囁いた。
清は心の中で反発した。
「私はそんなことはできない!」と叫びたかった。
しかし、彼女の体はその場から動かず、赤の光に引き寄せられるように吸い込まれた。
「清、私たちを忘れないで!」彼女たちの叫び声が耳の奥に響き続ける。
気がつけば、彼女は赤い光の中心に立っていた。
そこには、悪の影が彼女を見上げながら、囁いている。
「選びなさい。彼女たちを救うか、それとも自らの命を捧げて、私に従うのか」
清はその言葉に呑み込まれ、選択に悩む。
赤の神は彼女を見つめ、その目には確かな狡猾さがあった。
時が過ぎるにつれ、清は自分がどんな選択をしても、存在する幻の中に埋もれていくことを感じていた。
そして同時に、心の底から望んだ「再生」のための可能性が微かに残っていることも理解した。
全てを閉じ込めたこの神社の運命は、彼女の手の中にあった。
どちらを選ぶのか、その答えは彼女の心にしか存在しないのだった。