夜の商店街は静まり返り、いつもなら賑やかに人が行き交うはずの道も、何かがその空気を変えていた。
普段は笑い声や会話の声が響くこの場所に、今は eerie な沈黙が訪れていた。
商店街の奥にある古い雑貨屋、その名も「ふるさと屋」は、最近閉店してしまった。
店主の田中さんは、あまり人前には出ず、でも近隣の子供たちによくお菓子を配っていたので、皆に愛されていた。
だが、ある夜、彼は突然姿を消してしまったのだ。
その噂はすぐに広まり、誰もが果たして田中さんが何処へ行ったのか、恐れて話すこともできなかった。
しかし、それに異を唱えた男子中学生の一人、佐藤は、田中さんの失踪の真相を解明しようと決心する。
ある昼下がり、彼は友人たちを誘い、ふるさと屋へと足を運んだ。
「田中さんの行方を追いかけようぜ。怖がっているだけじゃ何も始まらない!」彼は仲間たちを鼓舞しながら言った。
友人たちの中には、怖がりな性格の鈴木や、特に心霊現象を信じる佐々木がいたが、彼らは興味本位でついて行くことにした。
日が沈み、薄暗さが増す頃、彼らはふるさと屋の前に立った。
その時、赤い明かりが遠くからじわじわと近づいてくるのが見えた。
あれは何だ?不安が心の中をぐるぐる回る。
鈴木は「逃げようよ、あれはお化けかもしれない!」とヒソヒソ言うが、佐藤は自分が信じていた勇気から目を逸らすことができなかった。
彼らは店の扉を開け、暗い店内に足を踏み入れた。
中は昔のまま、埃が積もり、しんと静まり返っていた。
窓から差し込む月明かりだけが彼らの道を照らしていた。
しかし、その赤い光が店内にまで入り込むと、異様な気配が漂い始めた。
周囲に何かがいるように感じた。
連れの佐々木が目を細めて周囲を見渡す。
「見て、壁に赤い手形がある…」と佐々木が震える声で呼びかけた。
確かに、壁の一部に赤く染まった手形があった。
それはまるで、何者かが必死にこの場所から出ようとしていたかのように見えた。
彼らは恐怖に震えながらも、その手形に近づいてみる。
その瞬間、ふるさと屋の奥から不気味な声が響いた。
「行かないで、助けて…」それは田中さんの声に似ていた。
驚きと恐れが渦巻く中、彼らはその方へ進むことにした。
何かを見つけなければ、この恐怖から逃れられないと感じていた。
声の正体を追い求め、奥の部屋にたどり着くと、そこには一枚の古びた鏡が置かれていた。
鏡にはかすかに赤い光が映り、誰かの影がうごめいている。
佐藤は鏡に近づき、自らの映像を確認すると、そこに映ったのは田中さんの顔だった。
しかし、彼は薄く笑みを浮かべており、何かを訴えているようだった。
「行かないで…行かないで…」
その瞬間、鏡が光り輝き、彼らはその不思議な力に引き寄せられる。
鈴木が叫ぶ。
「何だこれ!逃げよう!」だが、すでに手遅れだった。
彼らは一瞬にしてその世界に引きずり込まれた。
数日後、商店街には彼らの姿が見えなくなり、ただの静かな夜が続いていた。
しかし、今もなお、ふるさと屋には赤い手形が残り、時折、風に乗って田中さんの声が聞こえてくる。
「行かないで、助けて…」彼の影響を受けた新たな訪問者たちが、その場所に引き寄せられていくのだった。