「薄暗い道の先に」

街の中心にある古びたアパートには、一人の若い女性が住んでいた。
彼女の名前は佐藤美咲。
美咲は仕事に追われる生活の中、夜遅くまで残業をして帰る毎日だった。
そんなある夜、自宅に帰ると、何かが彼女の胸を締め付けるような嫌な感覚を覚えた。
いつもとは違う、何か不穏な空気が漂っている。

美咲は、疲れを癒すためにお風呂に浸かりながら、その不安感を振り払おうとした。
しかし、ふとした瞬間、彼女は背後に誰かの気配を感じた。
びくっと振り返るも、そこには誰もいない。
ただ、静まり返った部屋の中で、湯気が立ち昇る音だけが耳に残った。

翌日、彼女は仕事中もその不安感が頭から離れなかった。
そして、帰宅すると再び同じ気配を感じた。
今回は、より強く、まるで誰かが見ているかのような重い視線が彼女の背中を押していた。
それでも、美咲は気のせいだと自分に言い聞かせ、ふと目に入った鏡に向かって身だしなみを整えることにした。

その夜、ベッドに入ると、奇妙な夢を見た。
夢の中で美咲は、薄暗い道を歩いていた。
周囲には霧が立ち込め、彼女は不安に駆られながらも道を進む。
すると、その先に女性の姿が見えた。
顔は白く、まるで薄い布で包まれたような服を着ていた。
彼女は動かず、ただ美咲の方を見つめていた。
声は出ないが、心の中に何かを訴えかけてくるような感覚を受けた。

その後すぐに、美咲は目を覚まし、動揺したまま夜を過ごすことにした。
次の朝、彼女は友人にこの夢を話し、霊的な現象を信じていない彼女は笑い飛ばした。
しかし、美咲の中には直感的な恐怖が残り続けていた。
どうしてもその女性の存在が気になり、友人に勧められるまま霊についての本を買うことにした。

数日が過ぎ、気持ちが少し落ち着いた頃、美咲は再びその夢を見た。
今回は、夢の中の女性が身近に感じられ、その表情は少しずつ曇り始めていた。
美咲は、彼女が何かを伝えるために必死だと感じた。
数日後、夢の中の女性は、美咲の手を取り、どこかへ連れて行こうとした。
抵抗する美咲だが、彼女の温かい手から放たれる力に引き寄せられ、気がつけば何もない闇の中に立っていた。

目を覚ますと、美咲は冷や汗をかいていた。
彼女は、何かを解決しなければならない気がした。
誰なのか、何を求めているのかを知りたくなり、霊鑑定士に相談することを決意した。
数日後、鑑定士は美咲を見て「あなたに憑いているのは、過去に何かを抱えた女性の霊です。彼女は、あなたに何か重要なメッセージを伝えたいと思っているようです」と告げた。

その瞬間、美咲の心の奥に何かが響いた。
彼女は思い出した。
数年前、友人との約束を忘れてしまったこと、そしてその友人が事故で亡くなったこと。
彼女の死に対する罪悪感が、今回の霊の問題の核心であった。

美咲はその後、友人に手紙を書き、自分の思いを少しずつ消化していくことで、この霊から解放される道を選んだ。
そして、友人との思い出を大切にすること、約束を守ることが大切なのだと再認識した。

それからしばらく、夢の中の女性は姿を現さなくなった。
美咲は、その温かい手とともに解放されていく感覚を享受し、少しずつ心の負担が軽くなっていくことを感じた。
夜々に肩の力を抜き、心の平穏を取り戻しながら、彼女は新たな一歩を踏み出した。

タイトルとURLをコピーしました