ある村の山奥に、かつて繁栄を誇った神社があった。
その神社は、長い片道を進んだ先にひっそりと佇み、今はほとんど村人の記憶から消え去っていた。
しかし、村ではその神社にまつわる噂が広まっており、恐れられていた。
「みずみずしい葉が蔽う神社」と言われ、神社を訪れた者は二度と戻らないという言い伝えが存在した。
ある夏の日、17歳の健二は友人たちと共にその神社に挑戦しようと決めた。
彼は何事にも好奇心旺盛な性格で、何かしらの面白い体験ができると思い込んでいた。
彼は友人のさくらと太一を誘い、「あの神社の真実を知ろう」と言った。
特に、最近村で見かけるようになった不思議な現象について興味があったのだ。
彼らは夕暮れ時に神社への道を登り始めた。
初めのうちは楽しげな会話を交わしていたが、山の深い森に入る頃になると、だんだん雰囲気が重くなっていった。
空には薄暗い雲が立ち込め、微風が吹くたびに木々の葉がざわめく。
「ちょっと怖いな、帰ろうか?」と太一が口を開く。
しかし、健二は「まだ行ってないじゃないか、行こうよ!」とそのまま先を進むことにした。
やがて神社に辿り着くと、倒木や雑草で覆われた境内が広がっていた。
神社はまるで誰かを待っているように静まり返っていた。
健二は興奮を抑えきれず、古びた石の祭壇の前に立った。
「これが本当に試される場所なのか……」と彼はつぶやいた。
友人たちは一歩引いたが、健二はそのまま祭壇に近づいていった。
祭壇の上には、一枚の古びた木の板が横たわっていた。
それには「この力を求める者よ、叶える代わりに何かを蔽います」と書かれていた。
健二は、何か特別な力を得られると期待し、その言葉を無視した。
「試してみよう!」と彼は叫んだ。
その瞬間、周囲の空気が震え、葉っぱが一斉に舞い上がった。
神社の隅々から神秘的な声が聞こえてくる。
「誰が来たのか?なぜこの場所を選んだのか?」と。
しかし、健二はその声に抗うように「力がほしいんだ!」と叫び返した。
声は彼に強烈な視線を投げかけながら響いた。
「あなたの求めるものには、終わりがある。」友人たちは恐れから一歩後ずさり、怯えた表情を浮かべていた。
霧のような何かが周囲を覆い始め、視界が次第に暗くなっていく。
健二は必死でその霧を振り払おうとしたが、気がつくと動けなくなっていた。
「どうにかしなきゃ!」と叫ぶが、彼の声は代わりに神社の響きに飲み込まれてしまった。
気がつくと、自身の周囲には奇怪な影が現れ、さまざまな顔が彼を見つめていた。
一瞬にして、彼は友人たちの叫び声を聞いたが、それもすぐに消え去った。
彼は孤独な恐怖の中に取り残されてしまった。
そして、健二はその瞬間、力を求めたが代わりに何が蔽われるのかを理解することとなった。
自分自身を見つめ直し、彼の心の中にある本当の恐れが現れてきた。
この神社は彼を試すための場であり、彼は逃げ道を失ってしまった。
気がつくと、再び神社の境内に一人立っている自分を見た。
友人たちの姿はどこにもない。
彼は恐れと混乱の中、ついに神社を後にした。
しかし、村に帰る途中、彼の心には疑念が渦巻いた。
「何が蔽われたのか?お前は何を失ったのだ?」その問いは、彼の心の奥底に刻まれ、消えることはなかった。
村人たちは今も神社を恐れ続け、次の従者を待ち続けている。
健二はその夜、眠れぬ日々を送り続け、果たして本当に戻ってこなければならなかったのか、何を選んで、何を失ったのかに思いを馳せるのだった。