大学の卒業を控えた慎太郎は、研究テーマの一環として「心霊現象」を探ることに決めた。
彼は特に、神社の伝説で知られる「華の町」に興味を持った。
この町には、かつて華やかな祭りが行われていたが、突如として消え去った伝説があるという。
その背後には、不思議な現象や人々の思いが詰まっていると言われていた。
慎太郎は、この町を訪れることにした。
町に着くと、静かな街並みが目に入った。
古びた神社が佇んでおり、その周囲には薄暗い森が広がっていた。
彼はまず、神社を訪れてみることにした。
境内に足を踏み入れると、何かが背筋をぞくぞくさせた。
神社の奥には「か」の形をした石碑があり、そこには「過去は忘れ去るな」と刻まれていた。
慎太郎はその石碑に引き寄せられるように近づき、目を閉じてその言葉を思い描いた。
すると、耳元でささやくような声が聞こえた。
「探し続けなさい、私を見つけて…」彼は驚き、後ろを振り向いたが、誰もいなかった。
しかし、その声はまるで彼の中に潜んでいるようで、不気味さを増していった。
夜が訪れ、慎太郎は宿泊していた民宿で、町の伝説について調べ始めた。
宿の主人は言った。
「華の町に伝わる話には、一人の女性が関係している。彼女は祭りの主役で、美しい花嫁だった。しかし、祭りの最中に行方不明になり、以来、町には不幸が続いているんだ。」その話を聞いて、慎太郎の心には興味が湧いた。
翌朝、慎太郎は再び神社へ向かい、町の人々にその女性について尋ねてみた。
しかし、誰も名前を口にしなかった。
手がかりを求めて、彼は町の中心にある資料館にも足を運んだ。
そこで目にしたのは、「華」という名前の女性が描かれた古い絵だった。
その絵には、華やかな衣装を身にまとった彼女が笑顔で写っていた。
しかしその目は、どこか寂しさを漂わせているように見えた。
慎太郎は、彼女の存在に引き寄せられ、再び神社を訪れることにした。
今度は、石碑の前で手を合わせ、問いかける。
「華さん、あなたはどこにいるの？」その瞬間、風が強く吹き抜け、木々がざわめいた。
そして、再びあの声が耳に響いた。
「成し遂げなさい、私の願いを…」
慎太郎は決心した。
彼女の行方を探るために、祭りの伝説を解き明かさなければならない。
町の方々にもっと話を聞くと、夜の神社で何かが起きるという噂を耳にした。
彼はその晩、再び神社を訪れることにした。
夜、神社にたどり着くと、どこからともなく微かに花の香りが漂ってきた。
神社の境内には、美しい光が浮かび上がり、それは祭りの準備をする華の姿のようだった。
慎太郎は驚きつつも、彼女に声をかけた。
「華さん、あなたの想いは何ですか？」
彼女は微笑みながら、慎太郎の目をじっと見つめる。
「私の願いは、この町の人々に幸せをもたらすこと。そして、私を忘れないでほしい。」その瞬間、彼女の姿が光の中に消えていった。
慎太郎は、その光が町の人々へと流れ込む様子を見た。
一瞬の静寂の後、彼は目を覚ました。
薄明かりの中、周囲はいつもと変わらぬ神社だったが、心には華からの願いが深く刻まれていた。
慎太郎は、自身もこの町の伝説の一部になり、華の想いを届けるために生きることを決めた。
彼は町を離れることはなかった。
華の願いは成り、町に平和が戻るまで慎太郎はそこに留まり、彼女の伝説を語り継ぐことを心に誓ったのだった。
