静かな村にある古びた家。
その家は、誰も住んでいないと噂されていた。
村人たちは、そこにはかつて“マ”という名前の少女が住んでいたと言い伝えていた。
彼女は優しい性格で、村の人々から愛されていたが、ある日突然姿を消してしまった。
数年後、村の若者、太郎はその家に興味を持ち、友人たちと共に肝試しを計画した。
「あの家には何かあるに違いない！」と太郎は意気込んでいた。
友人たちは彼に合わせて参加するが、どこか不安を抱えていた。
特に、花子はその家のことを知っていたため、怖がっていた。
「本当に行くの？あの家は悪い噂が立っているんだよ。」花子は心配しながら言ったが、太郎は笑って、「そんなの関係ないよ。行こうぜ！」と強気に応じた。
友人たちは不安と興奮の中、古い家へと向かうことに決めた。
薄暗い道を進み、彼らはついにその家にたどり着いた。
建物は崩れかけていて、周囲には不気味な静けさが漂っていた。
中に入ると、埃っぽい空気が漂い、薄暗い部屋の中には古い家具が散乱していた。
何もかもが放置されているかのようだった。
太郎が部屋の隅にある鏡に近づくと、彼の目に映るものが異様に歪んで見えた。
「見て、これはおもしろいね！」と彼が笑うと、他の友人たちは戸惑いながらも近づいた。
しかし、花子はその光景を見て心配になった。
「やっぱり、帰ろうよ。」
その瞬間、背後で急にドアが閉まる音が響いた。
驚いた彼らは振り返ったが、ドアは頑丈に閉ざされていた。
なんとか開けようとするが、ドアはびくともせず、焦りが広がっていった。
「なんでこんなことに…」と太郎は汗をかきながら呟いた。
すると、壁の隅にかすかに影が動くのが見えた。
彼らの視線がその影に向かうと、そこには白い服を着た少女が立っていた。
「マ…」と太郎が呟く。
彼女は穏やかな笑顔を浮かべていたが、その目はどこか寂しげだった。
「助けて…私を解放して。」彼女は声を発した。
太郎は戸惑いながらも彼女に近づいた。
「どうしたんだ、君はどうしてここに？」
「私は罪を犯したの…」マは涙を浮かべながら告白した。
それは数年前、彼女が村の一人を助けられなかったことだった。
村人たちは彼女のせいでその者を失ったと噂を立て、恐れ嫌われ、彼女はそのまま引きこもることになったのだ。
「私には何もできない…」マは声を震わせ、周囲の空気が一瞬凍りついた。
彼女の存在がどんどん濃厚になっていく。
「私を許して。私を解放して。」
太郎はその言葉を聞いた瞬間、彼女を救うことで自らの罪を背負うことになった。
彼は、彼女の抱える苦悩を理解するように感じた。
「俺が助ける！一緒に出よう！」
しかし、周囲の空間は彼を拒み、まるで彼自身が罪を抱えているかのように感じた。
友人たちは必死にドアを叩き続けたが、開く気配はなかった。
太郎だけがその場に囚われ、マの目を見つめ返すことしかできなかった。
「罪は決して消えない。その罪が私を縛っているの。」マの言葉は暗闇の中で響く。
太郎は自らの意志をもって、彼女に寄り添う決意を固めた。
「君を一緒に連れ出す。そして、罪は背負う。」
彼はそう叫び、力強く彼女の手を取った。
しかし、その瞬間、彼は自らの視界が暗転するのを感じた。
次に目を開けたとき、彼は再び一人、ただ古い家に立ち尽くしていた。
友人たちの姿はなく、マも消えてしまった。
村の人々はその後もあの家を恐れ、近づくことはなかった。
しかし、時折、風に乗って聞こえる悲しげな声とともに、存在を失った少女の姿が木々の間を彷徨うのだった。
彼女の罪は決して消えず、永遠にその場に留まり続けるのだ。
