終わりの世界。
どこを見渡しても、灰色の廃墟が続いている。
そこは、かつて活気に満ちていた町の名残だったが、今は静寂がただ漂っている。
廊下の先には暗い影がゆらめいていて、まるで誰かが見ているかのような感覚が背筋を走る。
田中直樹は、廃墟となったこの場所で目を覚ました。
記憶は曖昧で、どうしてここにいるのかは思い出せなかった。
彼は立ち上がり、周囲を見回した。
目の前には、分厚い扉があり、重そうな木製の扉には不気味な飾りが施されていた。
廊下を進むにつれ、その扉が引き寄せられるかのように感じた。
直樹は扉を押し開けようとしたが、すでにそこには他の存在がいた。
彼は驚いて後ずさりする。
扉の向こう側には、見知らぬ女性が立っていた。
彼女の名は佐藤美咲。
彼女は深い影をまとい、まるで自分の存在を隠すかのようだった。
直樹の心に不安が募る。
「あなたもここの住人なの?」直樹が尋ねると、美咲は無言で頷いた。
彼女の目はどこか遠くを見つめている。
直樹には、彼女が過去に何があったのか、その理由が気になった。
「廊下が終わると、れいが来るよ。」美咲はそう呟いた。
その言葉に直樹は興味を惹かれる。
「れいって、何のこと?」彼は聞き返した。
美咲は廊下を指し示した。
「ここには、終わりがある。でも、れいが来ると、すべてが変わる。君が望まなくても。」その言葉には warning が含まれているようだったが、直樹は目の前の現象に惹かれ、進むことに決めた。
二人は廊下を進み、真っ暗な空間へと向かった。
壁は崩れかけていて、足元には落ちた瓦礫が散らばっていた。
背後には、美咲がついてきている気配を感じるが、彼女の姿はどこか薄れていくようだった。
突然、廊下の先に小さな光が見えた。
直樹はその光に引き寄せられ、足を速めた。
しかし、その光へ近づくにつれて、その明るさは不気味さを増していく。
廊下の奥から、ささやき声が響いてきた。
「戻ってこい。」その声は無慈悲で、彼の心に恐れを植え付けた。
振り返ると、美咲の声が耳に残り、彼の進むべき道を揺らがせた。
「戻ることは、終わりに戻ること。れいは自由なんだ。」
直樹は迷った。
美咲の忠告を無視し、光に向かって進み続けた。
果たしてれいとは一体誰なのか、何が待ち受けているのか。
彼の心には、無数の疑問が渦巻いていた。
光に達すると、彼の目の前にはもう一つの扉が現れた。
その扉には、古い文字が刻まれていた。
それは「終わりの扉」と記されていた。
直樹は扉を開こうと手をかけた。
「開けてはいけない!」美咲が叫び、彼の腕を掴んだ。
「どうして?」直樹は反発し、自分の好奇心を抑えきれなかった。
「開けたら、れいが解き放たれる。終わってはいけない!」美咲の声には必死さがこもっていた。
だが、直樹はその声を振り切るように扉を引いた。
その瞬間、廊下は強い風に包まれ、暗闇に引き込まれるような感覚が襲ってきた。
美咲の姿は消え、彼一人だけがその場に取り残された。
「終わりはすべてだ。」その声が再び響く。
そして、目の前の扉が内側から開かれた。
そこに広がっていたのは、誰もいない真っ白な空間だった。
「君が選んだ終わり、また新たな始まりだ。」脳裏に響くその声に、直樹は何も言えなくなった。
廊下は消え、彼の思考は混乱したまま。
直樹はただ空虚な記憶の中に流され、新たな「終わり」を迎えるだけだった。