「終わりの地に消えた声」

深い闇に包まれた小さな村、そこには何世代にもわたって語り継がれてきた禁忌がある。
村の外れには「終わりの地」という名の古びた神社がある。
その神社は、かつて村を守るための場所として築かれたが、ある悲劇がきっかけで人々はその存在を忘れ、恐れ、近づかないようになった。

若者たちはその神社についての噂を耳にしていた。
村の人々が何かを隠しているかのように、神社に近づくことが許されない理由があるとされていた。
「そこには、悪霊が棲んでいる」という言い伝えや、「行った者は二度と帰れない」という恐怖が村を覆っていた。

そんなある日、大学帰りの健太は、友人の光に勧められて「終わりの地」を訪れることに決めた。
「こんな噂なんて、ただの迷信だよ」と彼は笑い飛ばした。
しかし、心の奥底では不安がくすぶっていた。
彼の後ろには、いつも一緒にいる光が彼を引き留めようと少し気をもんでいた。

神社への道は薄暗く、ひんやりとした空気が漂っていた。
二人は静まり返った森を横切り、神社へと足を運ぶ。
周囲の木々はまるで二人を警告するかのようにざわめき、葉が風に揺れ動く音が聞こえる。
「本当に行くの?」光が少し蒼ざめた顔で尋ねたが、健太はその問に対して無言で頷いた。

神社にたどり着くと、不気味な静けさが二人を包み込んだ。
古びた鳥居が彼らを迎え入れるけれど、まるでその先にいる者たちが許してくれないように感じる。
「さあ、入ろう」という健太の声が、周囲の静寂に反響した。

足を踏み入れた瞬間、肌を刺すような寒気が走り、どこか異次元に迷い込んだような気分に襲われた。
神社の中は暗く、神像の周りには古いお供え物が散乱している。
異様な雰囲気に圧倒された光は、心細さを感じ、もう帰ろうと提案したが、健太は「始めに来たんだから最後まで見ていこうよ」と言い放った。

その時、急に空気が重たくなり、暗闇の中から何かが彼らを見つめ返しているような感覚を覚えた。
「気のせいだ」と健太は必死に自分をなだめたが、異様な圧迫感は増すばかりだった。
いつしか神社の奥から耳鳴りのような音が響き渡り、まるで闇が二人を包み込むかのようだった。

「もう帰ろう、健太」と光が私の腕を掴む。
「どうしたの?何かいるの?」健太は不安そうに振り返ったが、その瞬間、背後に立つ影が彼を引き寄せた。
目にも見えないほどの速さで、健太は闇の中に取り込まれてしまった。

「健太!」光は叫び、本能的に彼を引き戻そうとしたが、彼の手は虚空を掴むだけだった。
闇の奥から、楽しい音楽が響き渡り、笑い声が聞こえてくる。
しかしその音楽はやがてけたたましい悲鳴へと変わり、彼女の心に恐怖を植え付けた。

何が起こったのか、全く理解できなかった光は、ただ実行しようとしただけだったが、もう遅かった。
彼女は神社の中に一人取り残され、終わることのない暗闇の中に呑み込まれていく。

その後、村では二人の行方を知る者はいなかった。
「終わりの地」への興味は禁忌のままとなり、村は再び静まり返っていった。
しかし、時折、神社の近くを通りかかる者たちは耳にすることがあった。
かつてそこにいた健太と光の声が、夜空にこだまするという噂を。
彼らはもう、この世に存在しない。
闇の奥底に閉じ込められ、永遠に冒険を続けるに違いない。

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