遠い田舎町に一軒の古びた家があった。
その家には、幼い頃から仲の良い友人、友美と健一が通い詰めていた。
二人は同じ小学校に通っていて、特に友美は健一を弟のように思っていた。
健一もまた、友美を姉のように慕っていたため、いつも一緒に遊んでいた。
ある日、友美は自分の家の倉庫で古い篭を見つけた。
それは埃をかぶったボロボロの篭で、外から見ると目立たないが、内側は意外にも綺麗な布で覆われていた。
友美はその篭を持って、健一の家に遊びに行くことにした。
二人が篭を持ち寄ると、友美は友達にその篭で何か面白い遊びができないかと提案した。
「この篭に入って遊んでみない?」友美は言った。
健一は一瞬とまどったが、友美の好奇心に引かれ、篭に入ることにした。
篭は意外にも広く、健一はその中で体を丸めて収まった。
しかし、篭の中に入った瞬間、健一は外の景色が変わっていくのに気づいた。
目の前にあった友美の顔がだんだんとぼやけ、周りの風景がどんどん暗くなっていく。
健一は思わず声を上げ、「友美、出して!」と叫んだ。
しかし、声はまるで篭の中に響き渡るようで、外には届かなかった。
友美は急いで篭を揺すり、健一を助けようとしたけれど、篭は動く気配がない。
「健一、大丈夫?」友美は心配になって言った。
しかし、篭の中の健一は不安でいっぱいだった。
周囲が暗くなるにつれて、不思議な感覚に包まれていく。
何かが彼の心を掴んでいるようだった。
その時、健一の目の前に不気味な影が現れた。
それは暗いオーラを放つ女性の姿だった。
彼女は言った。
「あなたは友人と一緒にいられると思っていたの?でも、ここには一人しかいられない。選ぶのはあなたよ。」健一は怯え、「いや、友美と一緒にいるよ!」と叫んだ。
影の女性は微笑みながら、次の言葉を発した。
「本当に友達なのなら、彼女を選ばずに私を選んでみなさい。」その言葉が終わった瞬間、健一は何かに引き寄せられ、篭の中で意識が混濁した。
どれほどの時間が経ったのか、健一は突然目を覚ました。
周りには何もなかった。
篭は彼の背後に置かれ、彼は一人ぼっちだった。
不安が募り、友美の名前を何度も呼んだが、返事はなかった。
彼は篭を引きずり出し、必死に友美の姿を探したが、影すら見えなかった。
数日後、健一は町で友美の家を訪ねた。
友美の両親は首を振り、「友美は最近行方不明になったの」と言った。
その言葉を聞いた瞬間、健一は胸が締め付けられる思いだった。
彼は自分が友美を篭の中に閉じ込めてしまったのではないかと恐れた。
数週間後、健一は心の中の恐怖を振り払うために、再びあの篭を訪れた。
篭の中は静まり返っていて、かすかに友美の声が聞こえるような気がした。
「健一、お願い、助けて…」
その声が彼を導くように、健一は篭の中に飛び込む決意をした。
自分の存在を消し、友美を救うために。
彼はゆっくりと篭に入った。
その瞬間、周囲の景色が又もや変わり始めた。
健一は暗闇の中で目を閉じ、友美と再会することを強く願った。
彼の意識は篭の中に吸い込まれていった。
そして、最後の瞬間、彼は友美の姿を見た。
「待っていたよ、健一」と、彼女の微笑みが彼に向けられた。
その瞬間、彼は暗闇の中で消えていくことに気付き、友美と共に未来へ進むために、二人の友の絆を取り戻すことができると信じた。