ある静かな平日の夜、大学生の佐藤健二は、自宅で友人とのオンラインゲームに夢中になっていた。
ゲームの合間に、彼はふと思いつき、過去に友人から聞いた怖い話を話題にすることにした。
友人たちは興味を示し、次々と怪談を披露し始めた。
しかし、健二の話す番になったとき、突然の停電が彼の部屋を暗闇に包んだ。
「おい、どうした!?」友人の一人が叫ぶ。
健二は、周囲の様子を探ろうと懐中電灯を手に取った。
照らされた部屋の壁に、彼は見覚えのないメモが貼られているのに気付く。
「算」とだけ書かれているそのメモは、まるで自分に何かを訴えているかのようだった。
「このメモ、見たことあるか?」健二は友人たちに尋ねたが、皆首を横に振る。
興味が湧いた彼は、メモに書かれている「算」が何を意味するのか調べることを決めた。
ゲームを一時中断し、ネットで調べてみると、数や計算に関する呪いの話が数多く出てきた。
どうやら、「算」を用いることで、何かを引き寄せてしまうという恐ろしい噂があったのだ。
困惑しつつも、彼はそれを無視することにした。
しかし、その夜彼が寝ていると、不気味な夢を見た。
夢の中で、彼は自分が知っている場所ではない薄暗い道を歩いていた。
そして、道端には奇妙な数字が浮かんでおり、それらを無意識のうちに読み上げていた。
「6、9、3…」その瞬間、背後から冷たい風が吹き抜け、思わず振り返ると、黒い影が立っていた。
心臓が高鳴り、彼は目が覚めた。
全身が汗でびっしょりだった。
翌日、健二は友人たちに夢の話をした。
しかし、友人たちはまるで興味を示さなかった。
彼は少し不安を感じつつも、日常に戻ろうとしたが、徐々に奇妙な現象が頻発するようになった。
特に夜になると、彼の部屋に誰かの気配を感じることが増えた。
そして、パソコンの画面には、意味不明な数字が表示されたり、メモに書かれていた「算」という言葉が頻繁に出てくるようになった。
一週間後、健二はついに逃げられないことを悟った。
不気味な出来事が連続して起こり、彼は自分自身が「算」に引き寄せられていると感じていた。
もう一度ネットで調べると、「算」には人を呪う力があり、特定の数字を受け入れることで、その力が強まるということが分かった。
彼は恐怖に駆られ、友人たちに伝えようとしたが、皆忙しく、相手にされなかった。
彼は孤独を深めながらも、何とか「算」の呪いを解く方法を見つけようと必死になった。
いくつかの寺院を訪れ、祈祷を依頼したが、効果はなかった。
健二は絶望し、思いつめた夜、再び夢の中に入る。
今度は、道の向こうに奇妙に光るものが見える。
それは、無数の数字が踊るように現れては消えていく様子だった。
彼はその輝きに引かれるように近づいていくが、足が重く、なかなか進むことができなかった。
その瞬間、背後から耳元に囁く声が響いた。
「助けてほしいなら、算を選びなさい。」
健二は思わず心を乱され、慌ててその場から逃げようとする。
しかし、強い力で引き留められ、彼の目の前にはゆらゆらとした影が現れた。
完全に恐怖に捕らわれた彼は、とうとう意識を失ってしまった。
目が覚めた時、健二は自分の部屋に戻っていた。
しかし、すべてが変わっていた。
自分の周りには数多くの計算式が浮かび上がり、まるで彼の運命そのものが算に支配されているような感覚に襲われた。
彼は深い絶望感に包まれ、「算」の呪いから逃れることができないことを理解した。
その瞬間、彼の耳元で再び囁く声が響いた。
「もう、選択肢はない。」
それからの日々、健二は夜になると、数や計算の恐怖に怯えながら生きることしかできなかった。
彼はついに自分の意識が、未知の数字の中に囚われているのを感じながら、永遠に平穏を失ったのだった。