夜の静けさの中、学校の裏山には一軒の古びた小屋があった。
その小屋は、かつて若い教師たちが集まり、霊的な存在に対する掟を学ぶための場所として使われていた。
しかし、今では誰も近づかない禁断の地となっていた。
その小屋に、ある日、一人の若い教師が訪れた。
彼の名前は佐藤直樹。
前任の教師たちからの噂を耳にして、興味を惹かれたのだ。
「この小屋には、天の声が聞こえる」と。
直樹はそんな話を信じていたわけではなかったが、何かのきっかけで感じた不思議な魅力が彼を導いていた。
直樹は、薄暗い小屋の扉を開けた。
中は埃まみれで、家具は朽ち果て、窓からは月明かりが差し込んでいた。
彼は少し緊張しながらも、小屋の中に入ると、床に座り込んだ。
心を静め、耳を澄ます。
「本当に天の声が聞こえるのだろうか」と、自問自答する。
しばらく静寂が続いたが、やがて彼は小さく囁く声を感じた。
それは、かすかな風のように彼の耳に届いた。
「直樹…」という声。
驚き、彼は思わず身をすくめた。
誰かが彼の名前を呼んでいる。
しかし、周りには誰もいない。
当たりの暗闇に目を凝らしても、一切の影すら見えなかった。
怖れを感じつつも、直樹は冷静さを保とうとした。
「何者なのか…?」声は再びささやいた。
「師たちが修行した場所だ。この小屋には、あなたが背負うべき運命がある」と。
直樹はその言葉を理解するのに少し時間がかかったが、それはまさに彼が探し求めていたものであった。
「私たちの信じた道を、あなたは受け入れるのか?」その声は続けた。
直樹は心の中で葛藤していた。
かつての教師たちが体験した恐ろしい現象や、信じた道を外れてしまった者たちの噂が頭をよぎる。
しかし、彼はごく自然に「受け入れます」と答えていた。
その瞬間、風が強く吹き抜け、窓が激しく叩かれるように揺れた。
あたりは一瞬にして冷え込み、彼の背筋に寒気が走った。
何かが彼に迫ってきている。
すると、天井から降り注ぐように光が溢れ、彼の身体を包み込んだ。
「れ」という声が響き渡り、その刹那、彼は違った世界に足を踏み入れた。
その空間には、かつて小屋に集った師たちの姿が浮かんでいた。
「来たか、若者よ。我々の導きが必要だ」と、彼らはゆっくりと近づいてくる。
直樹は恐怖を振り払い、自分の意志を固めた。
彼は、彼らが抱えていた思いを理解しようと心を開いた。
「私は、彼らの教えを受け継ぎたい」と叫んだ。
その時、天からさらに声が響いてきた。
「ならば、お前の心の奥底にある選択を思い出せ。それが成功の鍵になる」と。
その言葉が彼の心に深く刻み込まれた。
“天の声”が直樹を見つめ、彼を見守るように包み込んだ。
彼は何故か、自分が特別な使命を与えられたのだと感じた。
時が経つにつれ、彼は小屋を後にすることとなり、様々な出来事や人々と出会いながら、自身の道を模索していくことになるのだった。
しかし、忘れてはならないのは、その小屋に宿る邪悪な力の存在だった。
直樹は、天の声を聞くことができたことに満足する一方で、次第に暗い影が彼の生活に忍び寄っていたことに気付かなかった。
彼が自身の運命を受け入れたその代償は、想像以上に大きなものなのかもしれない。
魅了され続ける以上も、彼はその運命から逃れることはできなかった。