「禁断の山と青い影」

昔、山深い村に「綜(しゅう)」と呼ばれる集落がありました。
その村は、代々受け継がれてきた伝説に守られ、村人たちはその教えを守りながら平和に暮らしていました。
しかし、村の真上にそびえる巨大な山には、禁断の地とされる場所が存在しました。
村人たちはその地に近づくことを禁じ、破ってしまった者には恐ろしい運命が待ち受けると語り継がれていました。

ある日、村から旅立った若者が数人戻ってきました。
彼らは「冒険心」を抑えきれず、禁じられた山に挑むことを決意しました。
彼らの中には、「継(けい)」という頑固な性格の少年がいました。
彼は過去の伝説を疑い、「何も起こらない」と豪語していました。
そして、彼は仲間を引き連れ、山を登り始めました。

途中、彼らは美しい花や清らかな水に心を奪われ、つい気を緩めていました。
しかし、次第に空気は重くなり、山の雰囲気は異様に変わっていきました。
村人たちが恐れた禁断の地に近づくにつれ、彼らはお互いの中に剥がれ落ちるような不安を感じるようになりました。
それでも「継」はその感情を無視し、更に進んでいくことを選んだのです。

しばらく進むと、彼らは山の頂上近くにたどり着きました。
そこには、不気味なお社があり、その周囲には黒い煙が立ち込めていました。
村の伝説には、お社には「破」の神が祀られていると伝えられており、決して近づいてはいけないと言われていました。
しかし、「継」はその言葉を耳にせず、お社に近づいていきました。

彼は、仲間に「ほら、何にもないだろう。神様なんて存在しないんだ」と挑発しました。
しかし、その瞬間、空は真っ黒になり、雷が轟きました。
周囲の風がざわめき、仲間たちは恐怖に駆られました。
だが、「継」はなおも立ち尽くし、お社の門を叩きました。

音が響くと、すぐに異変が起こりました。
その場にいた全員が、目の前の命の危険を感じました。
「何かが来る!」と仲間が叫びました。
体が硬直し、恐怖で声が出せずにいると、暗闇の中から影のようなものが近づいてきました。
影は「お前たちが破棄した掟の代償を支払え」と低い声で語りかけました。
彼らの心に万全の恐怖が広がりました。

仲間たちは恐怖に足を箍(は)められ、逃げることもままならない状況に追い込まれました。
すると、「継」はその影と向き合い、さらに挑発しました。
「来い!お前なんて怖くない!」その言葉と共に、影は全ての恐怖を具現化したような形相を現し、「お前の従った運命がここにいる」と返すと、彼を飲み込んでしまいました。

彼の叫び声が山中に響き渡り、仲間たちは一瞬、その姿を見失いました。
恐怖と混乱の中で、彼らは逃げ出しましたが、誰も振り返ることができなかったのです。

村に戻った仲間たちは、村人たちに「継」がはぐれてしまったことを伝えました。
しかし、彼を思い出す者は誰もおらず、ただ彼の存在を知る者たちが村を後にしました。
禁断の地に踏み入れたことの代償は、何も返っては来ないと、村の教えが新たに彼らの心に深く刻まれることになったのです。

それ以来、村はさらなる静寂に包まれました。
伝説は、新たな破の教訓を語り続けました。
恐れた人々は、命を守るために、山を二度と訪れることはありませんでした。
その教えが永遠に受け継がれていくのです。

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