「禁忌の篭に閉じ込められて」

「私たちは禁忌を犯してしまった」

ある町に、古びた篭が保管されている博物館があった。
その篭は、かつて村で行われていた禁忌の儀式に使われていたもので、過去に恐ろしい事件を引き起こしたと言われていた。
人々は篭を遠くから見つめることはあっても、その近くには決して近寄らなかった。
篭に触れることが禁忌とされていたからだ。

ある日、大学の友人である健太と美咲は、その博物館に足を運んだ。
二人は好奇心旺盛で、特に禁忌に興味を持つ性格だった。
篭の話を聞き、ぜひその不気味な雰囲気を体験してみたいと思ったのだ。

博物館に着くと、篭は薄暗い空間の中に置かれていた。
古びた木材でできた篭は、見た目には異常はなさそうだったが、冷たい空気が周囲を包み込んでいた。
篭に近づくにつれ、二人は一種の引き寄せられる感覚を覚えた。

「触ってみようか?」と健太が言った。
その言葉に美咲は驚いたが、同時に好奇心が勝った。
「でも、禁忌って言われているし…」と躊躇しながらも、拒むことはできなかった。
二人は目を合わせ、同時に篭に手を触れた。

その瞬間、空気が震え、周囲が暗くなった。
篭から黒い霧が立ち上り、二人の足元に絡みつくように流れた。
彼らは驚き、すぐに手を引っ込めたが、すでに遅かった。

「何か、変だ…」健太が呟く。
彼の顔には恐怖の色が広がっていたが、美咲は意外と冷静だった。
「もしかして、篭に何かがあるのかも…」その通りだった。
篭に触れた瞬間、何か見えない印が二人の体に刻まれたのだ。

その後の数日、二人は不思議な現象に見舞われるようになった。
例えば、健太の隣に誰かが立っているはずなのに、振り返ると誰もいない。
美咲の耳元では、かすかに「戻れなくなる」と囁く声が聞こえる。
その恐怖が日々増していく中、彼らは次第に精神的に追い込まれていった。

ある晩、健太は悪夢にうなされて目を覚ました。
夢の中で彼は篭の前に立っており、何かに呼ばれていた。
その声は無数の人々の声で、まるで彼を求めるかのようだった。
「意識を戻せ、戻れなくなるぞ」という言葉が繰り返され、彼は心臓が高鳴るのを感じた。

翌日、二人はもう一度博物館に向かうことにした。
恐怖を抱えながらも、彼らはこの現象を解明する決意を固めた。
篭にどんな力が宿っているのか、知りたかったからだ。

博物館に入ると、篭は以前にも増して恐ろしい存在感を放っていた。
近づくにつれ、胸の鼓動が高まり、背筋をさすような冷気が流れた。
「もう帰ろう、危険だ」と美咲が言ったが、健太はその場を離れようとはしなかった。
禁忌に対する恐怖と興味が交錯しているようだった。

「篭には、何かが入っているんだ…」健太は篭をじっと見つめた。
言葉が空気に漂い、不安を煽った。
その時、篭の中に何かが揺らめくのが見えた。
美咲は思わず顔をしかめ、「やめて、そんなの見たくない…」と叫んだが、健太は手を伸ばして篭の蓋を開けようとした。

だが、篭が開く瞬間、周囲の空間が歪み、二人は引きずり込まれるようにその中に吸い込まれていった。
「お前たちも、戻れなくなる!」という声が響き渡り、彼らは一緒にその禁忌の世界に閉じ込められてしまった。

時が経つにつれ、篭の中での生活は彼らにとっておそろしい罰となった。
現実の世界では二人は失われた存在となり、あの篭に触れた時から、何も戻らないことを知っていたのだ。
二人は禁忌を犯してしまったことを悔いたが、すでに遅すぎたのだった。
彼らは永遠にその篭の中で彷徨い続ける運命にあった。

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