気がつくと、私は山の中で小さな祠に辿り着いていた。
周りは鬱蒼とした木々に囲まれ、薄暗く、まるでこの世のものとは思えない雰囲気が漂っている。
引き寄せられるように、その祠に近づいた私の心には、何か特別な気配を感じていた。
祠の扉は古びており、押すと軽く軋んだ音を立てて開いた。
内部には小さな石像が置かれていて、その目はどこか私を見守っているかのようだった。
しかし、何かが違和感を抱かせた。
周囲には薄暗く、不気味な空気が満ちていて、私は思わず背筋がぞくりとした。
しばらくすると、外から耳障りな風の音が聞こえてきた。
それはまるで誰かが遠くで呼んでいるような声に思えた。
私は心を奮い立たせ、声の方向に目を向けた。
そこにいたのは、ぼんやりとした影だった。
気を引き締めると、その影に近づいていった。
「た…助けて…」影は弱々しい声でつぶやいた。
近づいてみると、女性の姿が現れた。
彼女の顔は青白く、まるで死にかけたようだった。
「ここから出られないの…」その言葉に、私は一瞬自分の心臓が止まったかのように感じた。
「どうしてこんなところに?」私は恐れながら尋ねた。
すると彼女は、祠の前にかつて多くの人々が集まっていたことを語り始めた。
彼女は村に住んでいたが、悪いことが続いたため、村人たちから嫌われ、祠に封印されてしまったという。
そして、その場所から出ることができず、永遠にこの不気味な祠に縛られているのだと。
私の内心は混乱した。
彼女の言葉には迫力があり、次第に恐怖が心の奥底に浸透していく。
そんな時、彼女の体が震え始めた。
無意識に後ずさった私と目が合った瞬間、「助けて!彼が来る…!」と叫んだ。
その言葉とともに、祠の中の空気が一変した。
まるで何か恐ろしい力が働いているようだった。
その瞬間、暴風が音を立てて祠の扉を打ち鳴らし、暗い影が現れた。
私は身の毛もよだち、冷や汗が流れ落ちた。
影は女性の後ろに立ち、彼女を見据えていた。
その表情は、人を狂わせるようなもので、私は恐怖がこみ上げてきた。
動けなくなった私の目の前で、影は彼女に向かって手を伸ばした。
「私を連れて行くのか…?」
その瞬間、彼女の顔に見せた表情は、遠くに逃げたいという恐怖から、暴力に屈したかのように変わった。
私にはどうしようもできない状況だった。
逃げ出す勇気も無く、ただその光景を見守るしかなかった。
影が彼女を捕まえると、彼女は恐怖の悲鳴をあげた。
周囲の空気が渦巻き、霊的な圧力が祠を押しつぶすように広がっていく。
私は思わず目を閉じ、意識を失いそうになった。
その時、「た…すけて…!」という彼女の声が耳元で響いた。
目を開けると、私は祠から出ていた。
何が起こったのか分からないまま、私の心の中には一つの問いが残った。
「彼女はどうなったのだろう…?」恐ろしい思い出が背後に迫ってくるように感じながら、私はその場を後にした。
山の中、遠くの村に向かって、ただ怯えながら走り続けた。